
特集の第8回は、日本ロレアルのロレアル リュクス事業本部の例を紹介する。「ランコム」など売り上げ規模が大きいラグジュアリーブランドを扱う同事業本部では、CX(顧客体験)向上を狙い、現場の美容部員の意識改革までも含めたDX(デジタルトランスフォーメーション)人材育成に取り組んでいる。
2020年10月、日本ロレアルはロレアル リュクス事業本部にCXを推進するチームを発足させた。店舗やECサイトなど顧客と日本ロレアルのタッチポイントが増えるなか、顧客を起点にしたシームレスな対応を実施して顧客満足度を高めることが目標だ。「リテールやマーケティング、デジタルといった各部門の垣根を越え、全体を俯瞰(ふかん)した行動を社員が取れるようにして、お客さまに最高の体験を提供したい」とロレアル リュクス事業本部オムニ リテール部CXシニア マネージャーの三木理寛氏は言う。
デジタル化により、日本ロレアルが手掛ける高級化粧品は美容部員が店頭で販売するだけでなく、同社のサイトや百貨店など流通側のサイトでも販売するようになった。オンラインによる売り上げの割合は次第に増えてきている。デジタル化が進んでも、顧客と日本ロレアルが長期的に良好な関係を築けるようにすることが同社におけるDXであり、これを実行できるDX人材の育成を重視した。
店頭でもオンラインでも同質のサービスを提供し、単なるシステム化ではなく店頭の接客のような“ヒューマンタッチ”を持たせるようにするという。このため、販売が分かり、デジタル化も理解している人材が求められていた。CXチーム発足に伴い、同社は3つの施策を打ち出した。いずれも20年から推進し、21年になって本格化したという。
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デジタル時代に向けた意識改革を推進
1つ目は、美容部員をはじめとした販売やマーケティングといった各ブランドの社員に対する意識変革を訴えたこと。「リテール・トランスフォーメーション・トレーニング」と呼ぶ施策を20年10月に実施し、その後も社員を集めたミーティングなどで三木氏はひたすら「マインドセット」を唱えてきたという。デジタル化が社内に浸透してきてもデジタルの専門家に任せてしまい、多くの社員は「自分ごと」として捉えにくかったからだ。
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