
特集の第5回は「meviy(メヴィー)」と呼ぶ製造業向けサービスで注目されるミスミの例を取り上げる。2016年にスタートした新規事業だが、これまでの実績が評価され、20年や21年に入って経済産業省などさまざまな団体から表彰された。同社では、事業の導入期と成長期でのDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成手法は異なる。ポイントは外部の「一流の人材」と社員との共創にあった。
メヴィーは、3次元CADデータをネット経由で受け付けると、すぐに部品の加工手配を行い、納品するサービス。独自開発のシステムによって、AI(人工知能)でコストを見積もり、自動的に製造し、最短1日で出荷する。
人手を介してやり取りする他社に比べ、受注から納品までの大幅な期間短縮につながった。16年にスタートすると21年3月までに、約5万5000ユーザーを獲得した。当初は数人の社員で始めた事業が、現在は数百人の社員を抱えるまでになった。
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ミスミは、製造業向けに機械部品や工具・消耗品などを生産・販売するメーカー兼商社。20年12月で約31万社と取引があり約3000万点以上の商品を扱っている。だがカタログでビジネスをしているため、図面を介してやり取りする場合など取りこぼしていた領域があった。
そこでデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを考案し、新規事業としてメヴィーを立ち上げた。開発当初はDXというキーワードはなかったが、デジタル化で変革を目指すというDXの考え方と方向は同じ。ミスミはDX人材を、どう育成してきたのか。
ミスミグループの常務執行役員でメヴィーを手掛けてきたID企業体社長の吉田光伸氏は、「新規事業で必要なDXスキルは、導入期と成長期、成熟期などフェーズで大きく異なる」と言う。
導入期は、ビジネスが分かり、デジタルリテラシーがあるだけでなく、新規事業を立ち上げるといった「改革」を推進する経験が問われる、と吉田氏は見ている。何もない「ゼロ」の状態から何かを生み出すのは、通常のビジネス運営とは異なるスキルだからだ。吉田氏はITベンダーで仕事をしてきており、さまざまな新規事業を手掛けてきた経験もあったため、これらのスキルを身につけていたといえる。
それでもメヴィーの開発は簡単ではなかった。こうしたサービスを実現するソフトが今まで存在しなかったからだ。吉田氏は世界中の製造関連のソフト会社に足を運んだが、当初はどこからもいい返事がもらえなかったという。設計や製造といった専業のソフト会社はあっても、設計データから製造データまでを連携して扱うのは難しかった。そこで吉田氏は国内外の人脈を生かし、トップレベルの技術者に協力してもらいながら開発した。
導入期はオープンイノベーションで、成長期は社内育成が重要
「新規ビジネスの導入期は、まだ仮説やコンセプトの段階。DX人材を育成する時間はなく、オープンイノベーションで共創するほうが速い。今後の事業展開を考えると、最初の段階で世界最高レベルのチームをつくれるかどうかがポイントになる」(吉田氏)
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