マーケDX人材の育て方、生かし方

特集3回目は、ヤマトグループの例を取り上げる。DX(デジタルトランスフォーメーション)人材としてビジネスも技術も理解できる社員を育成するため、デザイン思考などのビジネススキルからデータサイエンスといった技術スキルまで、幅広い内容の教育プログラムをそろえた。対象となる人材以外にも階層や職種にかかわらず、誰もが自由に学ぶことができる。

「Yamato Digital Academy」での学習風景。受講者はパソコンでどこでもオンラインで学べ、ライブによるプログラムで講師に質問もできる(写真/丸毛 透)
「Yamato Digital Academy」での学習風景。受講者はパソコンでどこでもオンラインで学べ、ライブによるプログラムで講師に質問もできる(写真/丸毛 透)
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Yamato Digital Academyの教育プログラムではヤマトグループの実データを活用して教えており、実践的な内容になっている(写真/丸毛 透)
Yamato Digital Academyの教育プログラムではヤマトグループの実データを活用して教えており、実践的な内容になっている(写真/丸毛 透)
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 ヤマト運輸を中核とするヤマトグループは、全社を挙げてデジタルシフトへ進んでいる。2021年1月に発表した中期経営計画(22年3月期~24年3月期)「Oneヤマト2023」に伴い、デジタル化の司令塔になる「デジタル機能本部」を発足。部門ごとにあったIT関連組織を1つにまとめ、ヤマトグループのDX化を後押しするようにした。さらに社員のデータ活用を推進するため、20年から一部で試行してきたDX人材育成に向けた新しい教育プログラムを「Yamato Digital Academy」として21年4月から本格化させた。

前回(第2回)はこちら

 経営層、デジタル機能本部のメンバー、各部門のリーダー、現場のスタッフといった組織階層ごとに異なる研修内容を用意しており、まずはヤマト運輸の社員からスタートさせた。今後は順次、グループ各社へ展開する。中期経営計画が終わるまでの3年間では約1000人に受講させる計画だ。

【特集】マーケDX人材の育て方、生かし方

 「次の100年に向けたグランドデザインとしてヤマトグループの構造改革を進めており、その一環としてデジタル化がある。基幹業務システムを見直すなどデータ整備の基盤づくりに取り組んでいるが、重要なのは社員のデータ活用だ。例えば荷物の動きを予測して先手を打つことで業務の効率化を図るなど、デジタルを使いこなせるDX人材を育成することが求められている」(ヤマト運輸執行役員デジタル機能本部デジタルデータ戦略担当の中林紀彦氏)

 ヤマトグループにとってのDXは、データを駆使した経営スタイル、いわゆる「データドリブン経営」への移行にある。ただし単にデータ活用ツールの操作方法を学ぶことではない。社員たちがデータから状況を考え、創意工夫をすることによって今までの業務を見直し、新たな価値を生み出せるようにすることが目的だ。

2021年4月の組織改正で「デジタル機能本部」を発足させ、DX戦略の推進母体とした(ヤマトの発表資料より)
2021年4月の組織改正で「デジタル機能本部」を発足させ、DX戦略の推進母体とした(ヤマトの発表資料より)
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Yamato Digital Academyは、ヤマト運輸では経営層向け(幹部候補含む約600人が対象)、デジタル機能本部のメンバー向け(約300人)、各部門のリーダーや現場のスタッフ向け(約3000人)の合計で約4000人が対象になる(ヤマトの発表資料より)
Yamato Digital Academyは、ヤマト運輸では経営層向け(幹部候補含む約600人が対象)、デジタル機能本部のメンバー向け(約300人)、各部門のリーダーや現場のスタッフ向け(約3000人)の合計で約4000人が対象になる(ヤマトの発表資料より)
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ビジネスと技術をつなぐ人材を育成

 Yamato Digital Academyには、DXに向けたビジネススキルとして「DX人材育成プログラム」と、技術スキルの「DXスキルアッププログラム」がある。外部のITベンダーと一緒につくったが、データはヤマトグループで利用されている本物のデータを使った。実践的といえる内容にして、ビジネスと技術を“つなぐ”人材を育成。ヤマトの現場とデジタル機能本部の意思疎通をスムーズにする。

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