「衣食住働遊学」と事業領域を広げるスノーピークが、2022年7月初旬に総合展示会&カンファレンスイベント「Snow Peak LIFE EXPO 2022」を開催した。大反響を起こした第1回から1年、さまざまなステークホルダーから共感を得るイベントはどうやってつくられるのか? 企画運営の担当者が要諦を語った。
「Snow Peak LIFE EXPO(以下エキスポ)」は、スノーピーク(新潟県三条市)の本社敷地内で開催される総合展示会&カンファレンスイベントだ。スノーピークが目指す未来を体験できるとあって、2021年7月に行われた第1回のエキスポには約1800人の関係者やステークホルダーが訪れ、100を超える新規事業の種が生まれた。
▼参考記事 スノーピークが前代未聞の超大型展示会 舞台は大自然、その勝算「第1回のエキスポの目的は大きく2つ。1つは、スノーピークの各事業の未来を関係者やステークホルダーの皆様に伝えていくこと。もう1つは、そこから新しい価値を生み出すことでした」と語るのは、エキスポの企画運営を2年連続で担当している開発部エグゼクティブクリエイターの小林悠氏。
2回目となる22年は、21年のエキスポなどを機に協業で生まれた新規事業の紹介が加わった。自社事業の紹介ブースに加えて会場に現れたのは、トヨタ自動車やコクヨなど異業種の企業とコラボレーションした商品やサービスの展示だ。
もう1つ、前回との大きな違いは、招待客だ。21年のエキスポは法人向けだったが、今回は日程を増やし、一般向けの開催期間を用意した。7月6~7日の前半を法人関係者向け、週末となる9~10日を一般向けとした。
「実は去年も一般の方をお呼びしたかったのですが、新型コロナウイルス禍で断念したという経緯があります。今年はスノーピークファンを中心に、地域で野遊び活動を推進している団体の方や、地元新潟県の大学などにもお声がけしました。驚いたのは、展示会開催を知り、バイト代をためて大阪から夜行バスに乗って来てくださった学生さんもいたことです」(小林氏)
参加したのは法人関係者、一般参加者合わせて約1500人。それぞれがスノーピークの創造する未来を体感した4日間となった。
今回のエキスポのテーマは、「社会人地球人としてつながりたい」。「『社会人』として見える未来には限界があっても、『地球人』の視点を持てば、はるか未来まで見つめて動きだせる、という思いがあったからです」(小林氏)
スノーピークが目指す理想のパートナーシップとは、「同じ気持ちで、同じ視座に立って未来を見据えること」(小林氏)。それが「体感」できなければ意味がない。前回の経験を踏まえ、約半年前から会場の構成や展示方法を練りに練ってつくり上げていった。
「地球人とは何なのか」から議論をスタート
「ミッションとして取り組んだのが、展示会に来てくださる事業パートナー候補にスノーピークと同じ気持ちをどう理解してもらえるか、ということでした。そのために、どんな順序でどんなメッセージを伝えるかというストーリーと導線設計に一番こだわりました」(小林氏)
来場者は受け付けで入場パスを受け取ると、まずは屋内会場である「スノーピーク ミュージアム」に足を運ぶ。創業以来の歴史や商品が展示されている場所だ。ここでスノーピークが目指してきた方向性が創業当時から変わっていないことを理解する。そのうえで屋外会場へと移る。
屋外会場の入り口部分にはアーチ状の巨大テントが設営され、「社会人地球人としてつながりたい」をテーマにしたショートムービーが流れている。大きな屋根の下で一度足を止め、その動画を見ると没入感が一気に高まる。後に続く展示ブースを見る前に、自分が地球人であることを感じてもらうための装置という役割だ。
「エキスポのキーワードが『地球人』に決まったのは22年の年始でした。その後、地球人という言葉の定義付けから作業は始まりました。社長と企画チームが本社キャンプ場のアウトドア会議で、『地球人とは何なんだ』と議論することからのスタートです」(小林氏)
スノーピークのスタッフたちは皆キャンパーであるがゆえ、「地球人」という意識を肌感覚で分かるかもしれない。しかし、来場客の中にはそうでない人も多い。同じ気持ちになってもらうためにはどう表現すべきか? そんな議論が日々続いたという。
「動画やメッセージを駆使して、展示をストーリー仕立てにしようと決まりました。例えば『誰が地球の未来をつくることができるのか?』などと各所に大きなクエスチョンボードを立て、その解が展示ブースで体感できるといった構成です。伝えたい内容が多く、短時間で理解していただくために要素を絞り込むのはとにかく大変でした」(小林氏)
そして、参加者のグループごとに先導するスタッフを配し、1時間ほどかけて展示エリア全体を体験してもらうガイドツアー方式も採用した。
「例えばサプライヤーの方々は、スノーピークの商品本部という製品の製造や仕入れ、調達等を担当するチームがアテンドします。日ごろからの関係性もありますし、同じ目線に立って、各事業の取り組みや協業の事例を紹介していくので、分かりやすいと好評でした」(小林氏)
第1回での反省を生かして、各ブースの説明員は3、4人に倍増した。社内では「事業の発展のために説明したい」という各部門からの申し出が多く、積極的にエキスポの運営に携わってくれたという。
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