2015年3月、東京都昭島市にオープンしたレストラン「Snow Peak Eat」で始まったスノーピークの食事業。現在、「Snow Peak Eat」は5店舗に拡大中だ。コロナ禍で苦境を強いられている飲食事業だが、スノーピークの目指す北極星はどこなのか? これまでの歩みと今後の戦略を聞いた。

食事業を取り仕切る事業創造本部新規事業開発課マネージャーの釘本祐一氏
食事業を担当する事業創造本部新業態開発課マネージャーの釘本祐一氏

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ミッションはキャンプ料理の楽しさを伝えること

 アウトドアをテーマにしたショッピングモール「モリパーク アウトドアヴィレッジ」(東京都昭島市)のオープンと同時に、スノーピークの食事業は外食業態からスタートした。スノーピークの物販店舗に併設する形で開業した1号店「Snow Peak Eat 昭島アウトドアヴィレッジ」(2021年6月に閉店)は、それまでなかったキャンプ料理を提供する店として脚光を集めた。ダッチオーブンで焼いた塊肉や、キャンプ用のチェア、カトラリーを使った食事体験は、単においしいものを食べる以上の価値をもたらした。

 「1号店のオープン当時は、まだ事業の目指す方向性が定まっていませんでした。新社長の体制になった20年3月に組織化され、食事業に対して本腰を入れ始めたかたちです」と語るのは、食事業を統括する釘本祐一氏。もともとは料理人としてレストランを渡り歩き、フランスへの武者修行も経験。その後、イケア・ジャパン(千葉県船橋市)に転職をして飲食事業のマネジメントに携わってきた人物だ。

「南町田ショッピングモール」(東京都町田市)内にある「スノーピーク イート」。店内に設営されたシェルターが目を引くレイアウトだ
「南町田グランベリーパーク」(東京都町田市)内にある「Snow Peak Eat」。店内に設営されたシェルターが目を引くレイアウトだ

 「今は店内飲食事業しかできていませんが、食事業は大きな可能性を秘めていると思います。スノーピークが今手掛けている衣食住働遊の5つの事業カテゴリーのどの事業にもうまく浸透するでしょう。我々が提供する自然の中での豊かな食体験を通して、お客様の人生価値の向上につながればと考えています」

 スノーピークのレストランには2つの業態がある。都心を中心に展開する「Snow Peak Eat」は、キャンプをしたことのない人たちのタッチポイントとして機能しており、ユーザーの多くはスノーピークを知らない非キャンパー層だ。一方、長野県・白馬村にオープンした「Restaurant 雪峰」はその逆で、スノーピークのファンがわざわざ足を運ぶケースが多いという。

 現在、食事業に携わっているスタッフは、各店舗の料理長と直営店舗課のマネジャーの約10人。さまざまなキャリアを経験してきた人材が携わっている。

 「メンバーに共通しているのはキャンプ好きということ。料理人としてのベースは和食だったりフレンチだったりいろいろなので、アイデアも多様で面白いです。我々のミッションは自然の中で料理を食べる喜びをお客さんに伝えること。企業理念で『人間性の回復』を掲げていますが、食はその理念に直結しているので、今後の事業展開拡大の可能性は大いにあると考えています」

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