三代目社長の山井梨沙氏が2014年に立ち上げたスノーピークのアパレル事業。コロナ禍でも業績は右肩上がりで推移し、マーケットはアジアやヨーロッパへも拡大中だ。競合ひしめくアパレル業界において、なぜスノーピークのアパレル事業は順調なのか? 開発と営業、それぞれの現場からブランドの強みを聞いた。
素材にこだわった、普段使いできる機能服
衣食住働遊──今でこそさまざまな領域で事業を展開しているスノーピークだが、アパレル事業が立ち上がった2014年、スノーピークに対する世間のイメージは、紛れもなく「キャンプ用品メーカー」だった。しかし、スノーピークが掲げる「人生に、野遊びを。」というコンセプトをより多くの人へ提案するためには、キャンプ用品だけでは限界がある。そこで、キャンプ以外の新しい分野として、梨沙氏の入社をきっかけにスタートしたのがアパレル事業だ。
「キャンプに適したデザインと機能を併せ持った服は、現在でこそ色々あります。でも、当時はほとんどありませんでした。本格的なアウトドアギアのような服ばかりで、デザインも普段使いには難しいものがありました。キャンプ場でも、家でも快適に着られる服というのは見当たらなかったんです」と振り返るのは、アパレル事業の立ち上げから携わっているApparel開発部エグゼクティブクリエイターの菅純哉氏。山井社長と二人三脚で事業を育ててきた人物だ。
「社長とは『会社に着てきた服のままでキャンプに行けたら理想だよね』とよく話していました。そこから、家とキャンプを行き来する服というコンセプトができたんです」(菅氏)
スノーピーク アパレルの特徴は、優れた機能性素材を使いながらも、日常でも着やすいデザインに落とし込んでいること。21年現在では、さまざまなブランドから「アーバンアウトドア」を標榜したウエアが発売されているが、スノーピーク アパレルはその先駆けといっても過言ではない。
「風合いが良く、肌離れが良く、肌触りが良いもの。いかに使いやすさと着心地をミックスできるか、というのはずっと重視している部分です。機能を優先するとどうしてもスポーツウエアのようなテクスチャーになってしまうので」(菅氏)
そうならないために、スノーピークが力を入れているのが素材の開発。機能やデザイン以前の根幹に「自分たちが快適に過ごせる服」という思いが強いからだ。「例えば、TAKIBIシリーズで使っているアラミドという最高峰の難燃素材があるのですが、そのままだと作業着のようにごわごわして着心地が良くありません。難燃効果を落とさずに、糸量を調整して目付を軽くしたり、表情や色落ち感を追求したり。素材メーカーさんとは、具体的な利用シーンや用途といった感性的な部分を密に打ち合わせて開発しています」(菅氏)
既製品の生地を使えば、コストを抑えられるし、生産管理や納期調整もしやすい。しかし、「基本的にはオリジナルで作っている」(菅氏)というから驚かされる。ハイエンドなキャンプ用品を長年開発することで培ったスノーピークのものづくり精神は、アパレル事業にもしっかりと受け継がれているのだ。
他事業との連携で提案力がアップ
「営業的な視点で言えば、アパレル事業だけじゃない、というところが強みです」と語るのは、販売計画部シニアマネージャーの加藤寿弥氏。通常のアパレルブランドの場合はアパレル単体でビジネスを成立させることがミッションとなるが、スノーピークの場合はそれだけではないという。
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