「その土地に深く根付く、人生と野遊びの案内所。」をコンセプトに、2020年7月にオープンした体験型複合施設「スノーピークランドステーション白馬」。観光案内所やスターバックス コーヒーを併設し、白馬観光の拠点としてはもちろん、地元民の憩いの場として人気を集め、立ち上がりは順調だ。オープンから1年、スノーピークの地方創生事業を可視化した第1号施設の現在地を聞いた。
白馬攻略に欠かせなかったキャンプとたき火
2021年7月にオープン1周年を迎えた「スノーピークランドステーション白馬」。コロナ禍でのオープンにもかかわらず、1年間での来場者数は20万人を超え、売り上げも当初の想定以上で推移。世界的建築家として知られる隈研吾氏が手掛けた施設からは白馬三山の雄大な景色を望むことができ、地元住民の憩いの場としても愛されている。
「白馬はスキーで有名なエリアで、6~10月のグリーンシーズンは閑散期になります。この場所はもともとスキー場の駐車場だったのですが、ここ数年は暖冬が続いた影響もあってずっと使われていなかった。このままでは宝の持ち腐れだということで、弊社に声がかかりました」
設立の経緯をこう語るのは、スノーピーク白馬の取締役、河合秀明氏。スノーピークの地方創生事業において、ここはその取り組みを可視化するためにつくられた“1丁目1番地”。スノーピークが地域に根づいたとき、どういったものができるのかを具体的に示すための施設だ。
「スノーピークランドステーション白馬の目的は大きく2つ。1つは閑散期における町おこしの起点となること。もう1つが、白馬の食の発信です。白馬には誰もが知るようなメジャーなローカルフードがないので、それを新たに作って広めることをミッションに、『Restaurant 雪峰』をつくりました」(河合氏)
河合氏は現在、家族と共に白馬周辺に移住してスノーピークランドステーション白馬のかじ取りを担っているが、以前は北海道の十勝で地方創生に携わっていた。自治体や地元の事業者・生産者と密にコミュニケーションを取り、なじみのない土地を盛り上げる難しさはそのときに痛感したという。
「地元の方々の思いもあるし、スノーピークがやりたいこともある。最初は意見が合わないこともあるし、ぶつかることもたくさんありました」(河合氏)。溝を埋めるために何度も行ったのがキャンプとたき火だ。「自然の中に身を置いて、人間性を回復するところからご一緒させていただくと、『一緒にがんばろう』と言ってくれる人が増えてくるんです。もちろん、全員がOKというわけにはいきませんが、周りを巻き込んでいくような流れはできます」(同)。現在はキャンプを通じて良い関係が築けているので、どんなことができるかを皆で話し合い、挑戦と検証を繰り返しているところだ。
白馬を盛り上げる施策として成功したのが、生産者や事業者を集めて開くマルシェである。施設前の広大な芝生スペースにテントを設営し、地元の農家や生花店、クラフト作家たちが集まって朝市のようなイベントを行っている。
「20年から始めて、夏は毎週土曜にオープンしています。非常に好評で、出店者を抽選で絞らせていただいている状況。観光客には白馬の知らなかった魅力に気づいてもらうきっかけになるし、地元の人たちにとってはPRになる。ここでの出会いをきっかけに新しいビジネスが生まれる場にもなっています。将来的には、地域のコミュニティースペースになるように盛り上げていきたいですね」(河合氏)
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