
21年の開催予定の東京五輪・パラリンピック開催を視野に、近年のマーケティングを強化してきた企業の1社が日本コカ・コーラだ。看板商品の「コカ・コーラ」は世界中で飲まれ続け、日本でも独自のマーケティング戦略を展開する。衰えぬブランド力の源泉は「驚き」と「エッジ」にある。
日経クロストレンドと日経MJが共同で実施した「マーケター実像調査 2021」の先進マーケティング企業ランキングで「コカ・コーラ」は8位。アンケートの回答者からも、「檸檬堂(れもんどう)は新カテゴリーへの参入だが、しっかりと消費者のココロを捉えた商品で大ヒットとなった」「CokeON(コークオン)アプリに注目している」と最近の取り組みを評価する声が多数寄せられている。
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2021年3月25日にスタートした聖火リレー。沿道にはコカ・コーラのおなじみの赤色に染まったタオルマフラーやコカ・コーラ社の飲料を持つ人々がランナーに声援を送っていた。1928年のオランダ・アムステルダム大会以来、企業としては最長となるワールドワイドパートーナーだ。2020年は本来なら東京五輪・パラリンピックが開催され、東京はコカ・コーラの赤一色に染まるはずだった。それだけに今年にかける思いは強い。
20年10月。東京・渋谷のスクランブル交差点の地上40メートルに「宙に浮かぶコカ・コーラ」が現れた。18万個の発光ダイオード(LED)照明を使った透過性LEDビジョンを設置し、照明を駆使してまるでコカ・コーラが空に浮かぶような映像が流れる。
開発が始まったのは17年末まで遡る。同年の8月にニューヨークのタイムズスクエアに米コカ・コーラが3Dロボティクス技術を使った屋外広告を公開し、話題を呼んだ。日本コカ・コーラの和佐高志CMO(最高マーケティング責任者)は「『日本でも見る人がワクワクするような、コカ・コーラならではのランドマークを』という思いから、プロジェクトが始まった」と話す。
まさにこのワクワクする感覚こそが日本コカのマーケティングの秘訣だ。同社はマーケティングの役割を「強力なブランディングとイノベーションで消費者に驚きを届け、継続的、利益成長のエンジンとなること」と定義する。和佐氏は「消費者が商品やサービスを購入する理由となる『エッジ』をいかに立たせるかが、マーケティングにおいて重要だ」と話す。
消費者が知らないものを好きになってもらう
その成功例となったのがレモンチューハイの「檸檬(れもん)堂」だ。缶チューハイはビールなどに比べ安価で人気も高いが、檸檬堂はあえて従来製品よりも1割ほど高い価格に設定。レモンをまるごとすりおろした果汁をお酒に漬け込む「前割りレモン製法」を使い、果汁率も7~17%と他の商品に比べて高めた。居酒屋で飲む本格的なレモンサワーを目指し、パッケージにも居酒屋の店員が腰に巻く前掛けなどをあしらった。
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