
日経クロストレンドと日経MJの共同企画「マーケターの実像調査 2021」の第2弾特集。本調査で「他社のマーケティングに関する取り組みで優れていると感じたもの」を聞いたところ、名前が挙がったのが日清食品ホールディングス(HD)の取り組みだ。遊び心あふれるプロモーションで若者を中心に話題を集め、ロングセラー商品「カップヌードル」のブランド力を保ち続けている。「迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ」。同社の行動規範「日清十則」の精神が販促にも息づいている。
替え歌とともに擬人化されたチーズが、削られながらカップヌードルに投入され、最後にはお笑い芸人の庄司智春さんが「メルティー!」と叫ぶ。あっけにとられていると、あっという間に15秒が過ぎていく。一見すると、よく分からないような日清のテレビCMがネット上で話題を呼んでいる。カップヌードルの欧風チーズカレー味のテレビCMだ。
「なぜこの人が起用されたのか。なぜこんなCMになったのか。この『違和感』こそが話題を生んでいる」。日清食品の白沢勉ブランドマネージャーはCMの狙いをこう説明する。通常、CMは商品の魅力をいかに伝えるかが重要になる。日清はあえてそこを狙わず、SNS(交流サイト)時代ならではの仕掛けをちりばめている。
【第2回】 「必要なのはデータリテラシーと仮説力」 富永氏のマーケ視点
【第3回】日清食品「バズるマーケ」3つの秘密 重要なのは「違和感」←今回はココ
白沢氏は「商品を深く理解されなくてもいい」と断言する。重視するのは分かりやすく、耳に残り、もう一度見たいと思えるかどうかだ。訴求ポイントを絞って、そこに遊び心を加える。テレビCMはユーチューブなどの動画共有サイトを使えば、1コマずつ静止して見ることができるからだ。
Twitterを使い、双方向だからこそできた販促キャンペーンもある。20年3月の「#カップヌードル炒飯(チャーハン)」だ。あるユーチューバーがカップヌードルを使ったチャーハンの料理動画を公開すると、それを見た日清の担当者はその日のうちにユーチューバーに連絡を取り、許可を得た上でカップヌードルの公式アカウントに掲載。さらに全15種類の味で作ったチャーハンをランキングするなど、「公式化」した上で拡散した。
カップヌードルを使ったアレンジレシピは茶わん蒸しなど他のレシピを生み、さらにチキンラーメンなど別の商品にも波及した。コロナ禍でストックした即席麺を食べ飽きることを防ぐ要因にもなった。
細部へのこだわりがSNS拡散を誘う
白沢氏はマーケティングで大事なことの1つに「スピード感」を挙げる。常にネット上をリサーチし、盛り上がっている話題を見つけ、すぐに販促のネタにする。「ネットでの情報スピードは速く、すぐにスマホの画面の上から下へ流れていく。つかんですぐネタにすることが重要だ」と話す。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー