
日経クロストレンドと日経MJの共同企画「マーケター実像調査 2021」は、現役マーケター400人の「今」を浮き彫りにした。その中で、目標とする、尊敬するマーケターとして名前が挙がったのが、プロマーケターの富永朋信氏だ。同氏が語るマーケティングの本質とは?(聞き手は日本経済新聞社・山田彩未)
富永朋信氏は、西友やドミノ・ピザジャパンなどでマーケティング責任者を務めた後、2019年7月に人工知能(AI)スタートアップのPreferred Networks(プリファード・ネットワークス、東京・千代田)でCMO(最高マーケティング責任者)に就いた。「カカクヤスク(KY)」のキャンペーンで西友のイメージを変えるなど、マーケティングで辣腕を振るってきた富永氏。テック系スタートアップに身を置く今、消費をどう見ているのか聞いた。
「POSは使えない」のウソ
富永さんは日本コカ・コーラで携帯電話と自販機を連動させる取り組みを打ち出すなど、いち早くデジタルを取り入れてきました。マーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるためには何が重要でしょうか。
会社の運営を深く理解することだ。マーケティングの分野に限った提案しやすく、分かりやすい施策ではなく、本社との指揮命令系統を分かって戦略を練らなければならない。
西友とイトーヨーカ堂で10年ほどいた間、ITベンダーからは店内メディアを作ってデジタルサイネージで流し、食品会社などから広告費をもらうという提案を何度も受けた。これを実現するには仕入れ以外の部門が広告という名目でメーカーと接触する機会を作る必要があり、現実的な業務プロセスに落とし込む上での難しさがある。また、来店客が立ち止まって広告を見る時間はほぼなく、こうした現場の状況を分かっていないため、うまくいかない。
プリファード・ネットワークス 執行役員CMO
富永さんはデータの分析を重視して戦略を練ることが多いそうですね。
人の行動の意図を理解しようとしなければ、デジタルデータを分析しても施策は表面的なものにとどまってしまう。CRM(顧客情報管理)で年代や性別に合った広告を出す提案もよく聞くが、顧客の属性にとらわれると、意図に合うものにならない。
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