連載の第1回では、日本企業における顧客中心主義=カスタマーセントリシティー(CC)の必要性と、CCの5つのステージについて述べた。第2回はCC4.0「顧客と経営している」ステージを目指すうえでカギとなる、顧客との「共創」を成功に導くデジタル顧客プラットフォームの可能性について紹介する。

(画像/Shutterstock)
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コラボは顧客との「共創」の一部にすぎない

 「主婦の声を集めてつくった調理器具」「女子大生がアイデアを出してつくったお菓子」……。そんな企画商品は決して目新しいものではないが、そういったコラボレーション商品は必ずしもヒットに結びつかないから実用的ではないと考えるマーケターも多いのではないか。しかし、こういった商品開発手法におけるコラボは、顧客との共創の中のごく一面であり、なおかつあまり効果的なやり方とはいえない。

 「もし顧客に彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」

 これは第1回でも紹介した、ヘンリー・フォードの発言だ。ポイントは、顧客は自分の「不満」や「要望」は知っているが、「本当に欲しいもの」は知らないということだ。だから「お客様の声」なるものをそのまま商品にしても、人々の生活を変えるようなイノベーションは起こらない。例えば、顧客に商品のアイデアを自由に考えてもらったとして、iPhoneが開発できただろうか。グーグルで世の中のあらゆる情報を検索できるようになっただろうか。答えはおそらくノーだろう。

■ 図1:顧客は「答え」を知らない
■ 図1:顧客は「答え」を知らない

 さらに、もし仮に「携帯できるコンピューター(すなわち現在のスマートフォン)」のアイデアを考えついた顧客がいたとして、それを実現する技術が企業にあっても、それだけで必ずアップルやグーグルになれるわけでもない。企業が「自社ガラケーの改善アイデア」を顧客に求め、その枠を超えるアイデアを黙殺している間は、いくら顧客の声を聞こうともスマホは生まれない。つまり、イノベーションは「顧客の表面的な声から何を見いだすか」「それに企業としていかに向き合うか」にかかっているといえる。

 例えば、当社が関わった案件の中で、母親と子どもをターゲットにしたヘアケア製品のパッケージ開発がある。もし、開発に際して「ファミリー向けシャンプーにふさわしいデザイン」を顧客に聞いていたなら、機能訴求コピーが大きく表示されたデザインや、子ども向けのイラストやキャラクターが描かれたデザインが選ばれただろう。

 しかし、母親たちのライフスタイルや生き方、価値観に耳を傾ける中で、「忙しい母親は限りある子どもとのバスタイムを『ゆとりある時間』にしたい」というより根本的なニーズを掘り当てた。そこから生まれたのが、忙しい母親が、バスタイムのひとときにゆったりできる「文字情報などを排除したシンプルでやさしいデザイン」だった。このように、「共創」とは単に「顧客の商品への要望を聞く」ということではない、ということを重ねてお伝えしたい。

顧客と「共創する」とは何か

 すでに述べたように、共創とは数ある商品開発手法のうちの1つではなく、顧客と対話を続けながら共に事業をつくっていくという企業の「姿勢」であり、「経営方針」そのものだ。

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