グリーは2021年7月にゲーム子会社のグリーエンターテインメント(東京・港)を設立した。その代表に就任した小竹讃久氏は、これまでグリーの屋台骨だったゲームプラットフォーム事業などを担当してきた人物。このコロナ禍にゲーム子会社を新たに立ち上げる狙いや事業の見通しなどを同氏に聞いた。

グリーエンターテインメントの代表に就任した小竹讃久氏
グリーエンターテインメントの代表に就任した小竹讃久氏

――新会社「グリーエンターテインメント」(以下、グリーエンタ)を設立した経緯から教えてください。

小竹讃久氏(以下、小竹) グリーは現在、「ゲーム事業」「広告・メディア事業」「ライブエンターテインメント事業」の3本を柱に据えています。このうち広告・メディアとライブエンターテインメントは立ち上がり始めているので、ゲーム事業に注力するフェーズになりました。子会社として、WFS(東京・港)、ポケラボ(東京・港)に続くゲーム会社を新設し、もう一度ゲームを強化していこうという方針です。

 私がこれまで管轄していた事業部門には、テレビアニメ作品などの製作委員会に参加して、IP(キャラクターなどの知的財産)に投資する事業があり、過去に30本程度のアニメ作品の製作委員会に携わりました。これからは単純に投資するだけではなく、その延長線上として、加わった製作委員会のIPを使ったゲーム開発事業をグリーエンタが担当する、という事業を伸ばしていこうと考えています。

 最近はNetflixやAmazon Prime Videoなどの配信プラットフォームを通して、日本のアニメ作品が全世界に配信されています。それら作品のIPを使ったゲームコンテンツは、作品の関連商品として、製作委員会の収入源の重要なポジションを担っていると思います。

 製作委員会にとって大事なゲームコンテンツ事業に責任を持つ――この意思の表れが、単なる事業部門のまま活動するのではなく、新会社としてグリーエンタを設立した理由です。さまざまなアニメ作品などの製作委員会に関わり、そのIPを拡大するというゴールに向けて、ゲーム事業を担っていくというのが、われわれの存在価値になりますね。

――以前から、IPのゲーム化が事業目的だったのですか?

小竹 当初はIPに投資する側面が強く、ゲーム開発担当という形で製作委員会に入ったわけではありませんでした。ただ、グリーはゲーム事業を得意としていますからIPのゲーム化をいくつか担当しました。社内チームで開発する以外に、外部スタジオとタッグを組むなどして必要に応じたやり方で進めてきました。今回、グリーエンタでは、そうしたIPのゲーム化により積極的に関わるという点が大きく異なると思います。

「ゲーム開発機能を強化していきたい」と話す小竹氏
「ゲーム開発機能を強化していきたい」と話す小竹氏

ゲーム開発から運用までできる企業が目標

――アプリゲームの運営移管業務が中心だったファンプレックス(東京・港)がグリーエンタの母体となるんですね。

小竹 はい。グリーエンタは、ファンプレックスを母体とし、グリー本体から分割したゲーム事業の一部とライセンス事業を吸収合併した上で、商号をグリーエンターテインメントに変更する形で設立しました。

 ですから、ファンプレックスが運営していたタイトルは、そのまま事業を継続します。しかし、これからは運営移管事業だけではなく、ゲーム開発能力の積み上げが必要だと考えています。

 ゲームを開発したら、運営が次に出てくる大事な事業なのは当然です。ファンプレックスを設立した2015年時点では、グリー社内に運営に適した人材が豊富にいましたし、WFSやポケラボなどのゲーム開発スタジオの立ち上げ時期と重なっていたので、全社的にも運営事業を専門会社としてまとめたいというタイミングでした。

 そこから時間がたち、各ゲームスタジオも軌道に乗ってきました。そこでグリーグループのゲーム事業を次のステップに進めるために、運営に特化するだけではなく、ゲーム開発にも着手することになりました。

 グリーエンタを、IPを使ったゲーム開発から運営まで一気通貫でできるような組織にするために、必要な機能はゲーム開発能力です。それをどのように積み上げていくのかが課題ですね。

――開発陣はどのように増やしていくのでしょうか。

小竹 時系列で変化すると思います。例えばファンプレックスが運営しているあるタイトルが配信終了することになったとして、その終了に合わせて、運営チームに新しいゲームの開発案件を入れるという段取りを考えています。ゲーム開発もゼロから始めるのではなく、WFSやポケラボなどで使っているゲームエンジンやデジタル資産を活用できますから。

 現在、ちょうど複数の新しいタイトルを開発しています。その開発のコアメンバーはファンプレックス在籍の社員で、社内の他開発チームからサポートを受けつつ、プロジェクトを進めているところです。ただし、「ゲーム開発」よりも「ゲーム運営」の方が好きだという社員もいますので、本人の意思を確認しながら、適材配置していくつもりです。

「NARUTO」などのゲーム事業は継承

――もともと管掌していた「ブラウザーゲーム」は担当しないのですか。

小竹 そうですね。タイトルとして継承するのは、『ONE PUNCH MAN一撃マジファイト』『NARUTO-ナルト-忍コレクション疾風乱舞』『PRINCE OF LEGEND LOVE ROYALE』『戦国アスカZERO』などのアプリゲームです。これらのほかにも運営を担当している非公開タイトルなどがあります。

『ONE PUNCH MAN 一撃マジファイト』©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 © GREE Entertainment, Inc. ©OURPALM CO.,LTD. ©Beijing Playcrab Technology Co., Ltd.
『ONE PUNCH MAN 一撃マジファイト』©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 © GREE Entertainment, Inc. ©OURPALM CO.,LTD. ©Beijing Playcrab Technology Co., Ltd.
『NARUTO-ナルト-忍コレクション疾風乱舞』©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ © GREE Entertainment, Inc. Produced & Developed by GREE / G Ent Co-Produced by 2015 BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
『NARUTO-ナルト-忍コレクション疾風乱舞』©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ © GREE Entertainment, Inc. Produced & Developed by GREE / G Ent Co-Produced by 2015 BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 しかし、『釣り★スタ』や『探検ドリランド』といったブラウザーゲームは、グリー本体で別の役員が管轄します。僕も長いことブラウザーゲーム部門を担当してきたので、個人的には寂しさを感じているところですが、グリーエンタとしては、これまでの管掌事業の延長ではなく、日本発のIPのゲーム化と、その海外展開を明確に目指しています。

――あくまでも国産IPを活用したゲームの開発が、グリーエンタの中核になるということですか。

小竹 はい。まさに日本発のIPを扱ったゲーム事業が軸になりますね。事実、日本が持つIP生産力はものすごいパワーがあります。「原作」と呼ばれるIPは日本で年間2万作品くらい生まれているといわれています。そして、そのクオリティーの高さは、世界を見ても類いまれだと思っています。

 近年、海外系企業のアニメ制作能力や技術が向上してきているという話もありますが、まだ目立った成功例が出てきていないのは、やはり原作が生まれる日本の「土壌」という強みの存在が大きい気がしています。この国にはものすごいIPが生まれ出てくる「土壌」が存在しており、私たちはそこから生まれてくる作品に対してリスペクトを持って接していきたいと思っています。

 そして、日本のIPを世界展開するにあたり、より広いファンの方に、より深くIPの世界観を楽しんでいただこうと考えたとき、ゲームは大きな推進力となります。日本にはすごいIPが生まれる土壌があり、われわれにはグリーグループが培ってきたゲームというノウハウがあります。

 優れたIPを、ゲームという形を通じて、さらに多くのファンの方々へと届けていくことができる下地が整っていたんです。だから、今回、グリーエンタという会社を設立して、ある程度の投資ができる体制になったのはとてもよかったと思っています。

『戦国アスカZERO』©G Ent.
『戦国アスカZERO』©G Ent.
『PRINCE OF LEGEND LOVE ROYALE』©HI-AX/© tunefan, Inc.
『PRINCE OF LEGEND LOVE ROYALE』©HI-AX/© tunefan, Inc.

21年内に初タイトルを開発予定

――グリーエンタが世界市場に売っていくということですか。

小竹 現在、モバイルアプリゲームのマーケットでは、中国のゲーム会社が多額の投資をして3D技術などをふんだんに取り入れたリッチなタイトルを制作し、中国国内だけではなく日本にもどんどん進出してきています。日本企業が、そうした開発規模の大きいタイトルと真っ向から戦うのはなかなか大変です。

 一方で、中国系ゲームが中心に展開している簡体字市場に正面から挑むのも、いろいろな規制などから簡単ではありません。ですので簡体字市場は現地の企業とパートナーを組んで展開する距離感で考え、繁体字市場や韓国市場などに目を向けています。

 日本の人口と比較して、台湾や香港、韓国などの市場は小さいと捉えられがちですが、繁体字市場で日本市場の3~4倍、韓国市場で2倍ほど売り上げている日本のIPゲームもあります。そもそも、中国や韓国のゲーム会社が、日本以外のマーケットで成功しているケースは結構多いので、そうした事例からいろいろ学んで、世界展開、主にアジア圏における展開方法を改善していかなければならないと思っています。

「2021年内にグリーエンタ初のタイトルをリリースしたい」と話す小竹氏
「2021年内にグリーエンタ初のタイトルをリリースしたい」と話す小竹氏

――中国や韓国のゲーム会社から学ぶということですか。

小竹 中国のゲームがすべて多額の開発費を投じて制作しているわけではないですから。僕たちももう少し学ばなければ、と社内で今まさに会話しているところなんです。

――グリーエンタとしては、アジア圏を中心とした海外事業に力を入れると。

小竹 国内市場にフォーカスする考え方もあると思いますが、そのIPがアニメや漫画などで開拓した海外マーケットは確実にカバーして、ファン層をより拡大できるゲームを運営していきたいと思います。

 このコロナ禍で、新しくゲーム会社を興すというのは、かなりアゲンスト(向かい風)だと思うんです。今は、スマホゲームの新作を出しても、そんなにすぐに売れないですよね、と外部の方にも突っ込まれます。

 国内で大ヒットを記録しているスマホゲームの制作会社のクリエイターの能力って稀有(けう)で、大規模なプロジェクトを動かせる力は普通のゲーム会社ではなかなか獲得できない部分だったりします。ですから、そういった要因に強く影響を受ける国内市場での成功ではなく、IPを軸にした海外展開を積極的に進めるという路線で、グリーエンタは勝負していきたいと思います。

――何かマイルストーンになるような目標はありますか。

小竹 グリーエンタはまだスタートしたばかり。自分たちにまだ足りない能力がいくつかあると分析しています。その能力をどのようなステップで身に付けていくのか。そのプロセスをイメージしながら、いつならグリーエンタとしてやりたいゲームが作れるかを考えたとき、「5本目でようやく自分たちがやりたいゲームが作れるようになる」という結論に至りました。

 これは、それまでに開発するゲームが「やりたいことができない」という意味ではなく、5本目のタイトルを作るときまでには、われわれが目指すものをフルセットで実現するために必要な能力を獲得できるだろう、という意味です。

 まずは21年内に、グリーエンタとしての最初のタイトルをリリースしたいと思っています。今夏には発表できると思いますが、僕らの中では相当な自信があります。今はまさに開発の終盤戦に入ったところですから、発表を楽しみにしていただきたいですね。

(写真/稲垣純也)