2020年11月発売の『ゼルダ無双 厄災の黙示録』が世界累計出荷本数370万本を突破。「無双」シリーズ最多を記録した。勢いは家庭用ゲームにとどまらず、スマートフォンゲームやIP活用でも業績を伸ばしている。コーエーテクモゲームスの鯉沼久史社長に、今後の事業拡大とコロナ禍の企業運営について聞いた。

コーエーテクモゲームスの鯉沼久史社長
コーエーテクモゲームスの鯉沼久史社長

――この1年はコロナ禍で社会が揺れ動きましたが、コーエーテクモゲームスの業績は好調でした。

鯉沼社長(以下、鯉沼氏) コロナ禍を受けて社員の働き方をどのように変えていくか、2020年はこのテーマに取り組んだ1年だったと思います。営業成績については、家庭用ゲーム、スマートフォンゲーム、IP(知的財産)活用事業の3つで目標通りの結果を出すことができ、高い業績に結び付きました。純利益ベースでも(コーエーとテクモの)経営統合以来、11期連続の増益となっています。

『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は2020年11月に発売され、世界累計出荷本数370万本を突破した (C)Nintendo (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved. Licensed by Nintendo
『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は2020年11月に発売され、世界累計出荷本数370万本を突破した (C)Nintendo (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved. Licensed by Nintendo

 主力の家庭用ゲームでは、20年11月に発売した『ゼルダ無双 厄災の黙示録』を筆頭に、いいタイトルを生み出すことができました。20年はコロナ禍にもかかわらず、タイトル数もほぼ予定通りに発売できました(関連記事「『ゼルダ無双』300万本突破 任天堂ゲームの続編が他社から出た訳」)。

 スマホゲームは、当社でヒットを出せていない分野でしたが、20年9月にサービス開始した『三國志 覇道』が大変なヒットとなりました。IP活用事業は、当社のIPを貸し出して他社がゲームを制作するというスキームのビジネスですが、『三国志・戦略版』が全世界でのダウンロード数5000万突破と好調で、『三國志2017』とともに収益拡大に大きく貢献してくれました。

2020年9月から国内で配信が始まったスマートフォンゲーム『三國志 覇道』 (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
2020年9月から国内で配信が始まったスマートフォンゲーム『三國志 覇道』 (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
2021年5月19日に『三國志 真戦』として日本でもサービスが始まった (C)Ejoy.com Limited. All Rights Reserved. (C)Shanghai TCI Network Technology Co., Ltd. All Rights Reserved. (C)KOEI TECMO GAMES CO., LTD. All rights reserved.
2021年5月19日に『三國志 真戦』として日本でもサービスが始まった (C)Ejoy.com Limited. All Rights Reserved. (C)Shanghai TCI Network Technology Co., Ltd. All Rights Reserved. (C)KOEI TECMO GAMES CO., LTD. All rights reserved.

――今後はグローバル向けにゲーム開発を進めるのでしょうか。IPライセンス許諾で成功している「三國志」シリーズは、グローバルに向けた題材になるのでしょうか。

鯉沼氏 グローバルで展開するか、地域限定で展開するかは、タイトルによって変えていくものだと考えています。グループとしてグローバル展開を目指していますし、市場が伸びている新興国など、海外で通用するタイトルの開発に力を入れています。一方で、日本やアジアのゲームファンの皆さんにも遊んでもらえるようなゲームの開発を、ないがしろには決してしません。別々の戦略で取り組んでいます。

 その中で三國志シリーズはグローバルで売れる傾向にあります。中国の方々が世界中に住んでいらっしゃることも大きく影響していると思います。『三国志・戦略版』は香港、台湾、韓国でもリリースされていますし、『新三國志』はベトナム語と英語版もあります。三國志シリーズはアジアを中心にしたグローバルタイトルという認識です。

グローバルタイトルは映画のように作り込む

――「仁王」シリーズもグローバルタイトルになりますか? 設定や世界観、キャラクターデザインが日本人向けという印象を受けますが、グローバルで展開する上での足かせにはならないですか?

『仁王2』は2020年3月に発売され、世界累計出荷本数200万本を突破した (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
『仁王2』は2020年3月に発売され、世界累計出荷本数200万本を突破した (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.

鯉沼氏 仁王シリーズは、グローバルタイトルと捉えています。映画『ラスト サムライ』(03年公開)がヒットしたり、ハリウッドで俳優の渡辺謙さんが活躍されたり、という状況があったので、『仁王』のようなゲームもグローバルタイトルになると予想していました。

 映画は題材を知らなくても、そのクオリティーを楽しむためにお金を出して見るものという共通認識がありますよね。ゲームも同じ。ストーリー性とゲーム性がしっかりしていれば、人々に受け入れられるのだと思います。グローバルタイトルであるためには、映画と同じような作り込みを、開発費をかけてしっかりやる必要があると思います。

――以前のインタビューで、家庭用ゲームで500万本売れるようなタイトルを出せるようにしていきたいとおっしゃっていましたが、到達度でいうと現在、どのあたりでしょう?

鯉沼氏 『ゼルダ無双 厄災の黙示録』が370万本に達しました。これは任天堂様のキャラクターを借りた、いわばコラボ系の作品です。やはり500万本のタイトルとするには、当社オリジナルIPで勝負しなければと考えています。200万本クラスのタイトルは出せるようになってきていますので、さらに伸ばすべきところ、改善すべきところを見極めて、取り組んでいます。

リモートワーク下のものづくりを模索中

――冒頭で、コロナ禍を受けて社員の働き方を考えた1年だったとおっしゃいましたが、詳しく教えていただけますか。

鯉沼氏 20年春に横浜市の日吉からみなとみらいに本社を移転して、オフィスが広くなったのは良かったのですが……。緊急事態宣言発令中は、社員の7割を在宅勤務にしました。ただ、そうなるとどうしても効率が上がらず開発期間を延ばさざるを得ないことも発生し、ジレンマを感じましたね。

 一方で、リモートワークのセキュリティーに関しては問題ありませんでした。リスクの芽があれば日々摘んでいます。社員がより快適にリモートワークができるように設備投資もしています。ただ、リモートワークだとどうしても、意図した以外のことが生まれにくいですね。ものづくりは、ちょっとした会話とか、ちょっとした集まりとか、本来の目的外のところから始まることが多いんです。

 私たちのもともとの仕事のやり方は、「100を作ろう」と始めたものが、130とか140くらいのクオリティーになる。それが普通です。でもリモートワークだとそういうことが起こりにくい。そこをどう改善するか、社内で検討・検証を重ねているところです。部署によって朝一番でオンラインミーティングを開いたり、1日1回チームの仲間と雑談する時間を設けたり、様々な形で試行錯誤し、効果的な方法があればマネジャークラス同士で共有しています。

コロナ禍の社員教育体制をつくる

――今後、500万本タイトルを生み出すため、開発体制をより強固にする方向かと思いますが、コロナ禍での採用についてどのように考えていますか?

鯉沼氏 この4月に127人の新入社員を迎え入れました。われわれのグループのビジョンは「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」で、そこに到達するには人材を増やすことが不可欠です。特に開発ラインを増やすため、人材を確保していきます。ただ、今後の採用については状況を見ながら慎重に進めます。コロナ禍で社員教育がやりにくくなっているというのが、その理由です。

 当社では、先輩社員が新入社員に、マンツーマンで仕事のやり方を指導する仕組みを導入し、3~4年で社員が一人前に育つという見込みを立てていました。それがリモートワークが続き、難しくなっています。新入社員が何か疑問に思ったとき、これまでなら近くにいる先輩社員にいろいろ質問できたのですが、リモートだとなかなかそうはいきません。忙しそうな先輩社員に、わざわざZoomで質問しようかどうか、迷う新入社員もいると思います。

 21年春に発表した次の中期経営計画を達成するためにも、この新しい状況に合わせた働き方や社員教育をしっかり整えていかなければなりません。

――21年度はどのような1年になるでしょう。

鯉沼氏 家庭用ゲームでは引き続き200万本級タイトルを出していき、その先の500万本級を目指します。新規IPの立ち上げもやりたいですね。あとは、以前から目標として掲げてきた月商10億円を稼げるクラスのスマホゲームを複数実現させます。『三國志 覇道』のヒットにより、そこまでの道筋が見えてきました。IP活用事業は規模が大きくなってきましたので、担当部署の体制を拡充してさらなる収益拡大を狙います。

(写真/稲垣純也)

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