在宅勤務が増えてもリアル本社は残す

――コロナ禍以前の仕事のやり方には戻れないとした場合、企業経営上、考えていることはありますか。

松田氏 20年12月から恒久的な制度として運用し始めた「在宅勤務形態」について少しお話しします。この制度、実はコロナ禍の前から検討していたものでした。弊社の事業拡大に伴ってオフィススペースが足りなくなるなど、勤務地が制約となる問題がどこかで顕在化するのではないかと考えていたのです。

 例えば、優秀なエンジニアやクリエイターが、親の介護で東京を離れなければならなくなった場合、在宅勤務が認められていない制度のままでは、会社を辞めるしか選択肢がなくなってしまいます。もし、物理的に会社に出てくる必要がない働き方を選択できるのであれば、このようなケースを避けると同時に、日本国内だけではなく、世界中の優秀なエンジニアやクリエイターを雇用できる可能性もあります。

「在宅勤務制度を以前から検討していた」という松田氏
「在宅勤務制度を以前から検討していた」という松田氏

 一方で、実際に顔を合わせて仕事をする重要性も認識しています。ゲーム開発は(人と人がぶつかり合う)コンタクトスポーツだから、(人と触れ合わない)在宅勤務は結構しんどいという意見もあります。当社の中でもさまざまな意見があり、在宅勤務を実現させるのは思いのほか心理的ハードルが高かったのです。

 しかし、新型コロナ対策で強制的に在宅勤務せざるを得なくなったことで、そのような心理的ハードルを越えて、「在宅勤務ができるかどうか」ではなく「在宅勤務下でいかに生産性を上げるか」と前向きな捉え方になってきたのは大きな変化であると考えています。

 開発のフェーズや、仕事内容によって、完全リモート環境でも十分問題なくできるという認識が共有され始めました。そうすると、そもそも仕事のやり方を変えてみてもよいのではないかというムードが醸成されるようになり、現在運用しているような在宅と出社のハイブリッド型の勤務制度の導入に至りました。こうしたトライによって、今後起こり得る外部環境の変化に強い組織形態を構築できつつあるのではないかと自負しています。

――社内の受け止め方はどうですか。

松田氏 好意的に受け止められる一方で、在宅勤務の課題点も指摘されています。例えば、従業員の疎外感や孤立感を完全に払拭することは難しいと感じています。社員間のコミュニケーションは、ゲーム開発のための創造性発揮に重要な要素です。在宅勤務であっても、これをどう維持・活性化できるかということが、課題だと考えています。

――ハイブリッド体制というのは、オフィス勤務を希望すれば誰でも出社できるのですか。

松田氏 週3日以上在宅勤務が原則の人と、週3日以上オフィス勤務が原則の人とに分けて、毎月見直す方法を採用しています。ゲーム開発のリモートワークは生産性が低いと言われることもありますが、ある意味挑戦だと捉えて取り組んでいます。

 将来的には、開発をすべてクラウド上で行えないかと考えています。現状はコスト面で採算が合わないため、今すぐに移行することはありませんが、クラウドのコストは、長い目で見れば必ず下がるでしょう。そうすれば、クラウド環境下でゲーム開発も現実的になるのではないでしょうか。

――ますます、オフィスの在り方も変わってきますね。

松田氏 その可能性は高いと思います。ただ、オフィスがなくなることは絶対にありませんし、なくすべきではないと考えています。組織のシンボルとしてのオフィスや、人が集まる場所としてのオフィスがないと、帰属意識が高まらないでしょう。

――国外のオフィスもきちんと残すのですか。

松田氏 国外の拠点も必要です。ただ、拠点をどこにするかというロケーションの制約はコロナ禍以前とは変わってきていると思います。オフィス賃料が異常に高い都市に固執する必要はなくなるのではないでしょうか。