コロナでオンライン視聴が定着

――ブシロードは“IPデベロッパー”を掲げ、IPを軸にさまざまなコンテンツを展開しています。20年は新たなIPとしてDJをテーマにした「D4DJ(ディーフォーディージェー)」を立ち上げました。コロナ禍ということで、IP拡大のカギを握るライブなどのイベントが開催しにくい状況が続きましたが、今後、どのように展開していきますか?(関連記事「80年代懐メロで20代も40代も取る ブシロード新作は『DJ』で勝負」)

広瀬氏 今後、新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、オフラインのイベントの動員数は以前通りというわけにはいかないでしょう。一方で、ユーザーの皆さんがオンラインライブを視聴することへの抵抗感は下がりました。有料のオンラインライブは、ある程度、形になっていますね。舞台など劇場にお客さんが入っていただく場合でも、オンライン視聴にもお客さんが付いてきているなと感じています。

 オフラインのライブイベントや舞台系コンテンツの問題点は、収容人数が限られることです。東京ドームでライブをやったとしても、見られるのは数万人。それがオンラインであればより多くの人に見てもらえます。オンライン視聴に対する皆さんのハードルが下がっていること自体は、コンテンツを広げる意味ですごくいい。今後は、オフラインとオンラインのハイブリッドでやっていくのが基本になっていくだろうなと思っています。

「DJ」をテーマにしたIP「D4DJ」は、6ユニット24人のキャラクターによるオリジナル曲や名曲のリミックスカバーなどを発信。「繋(つな)ぐ」をテーマに、アニメ、ゲーム、声優によるライブなどを展開している。スマホゲーム『D4DJ Groovy Mix』は2020年10月25日に配信を開始し、現在100万ダウンロードを突破
「DJ」をテーマにしたIP「D4DJ」は、6ユニット24人のキャラクターによるオリジナル曲や名曲のリミックスカバーなどを発信。「繋(つな)ぐ」をテーマに、アニメ、ゲーム、声優によるライブなどを展開している。スマホゲーム『D4DJ Groovy Mix』は2020年10月25日に配信を開始し、現在100万ダウンロードを突破

――オンラインを含めたイベント展開が“ニューノーマル”ということですね。

広瀬氏 なおかつ、それにより即したコンテンツづくりをしていったほうがいいと思っています。ライブだったら、今までは来てくださっているお客様に向けたつくりになっていました。でも、オンラインで、画面越しに視聴することが普通になるのなら、画面にカメラの映像を映すだけでなく、もう少し情報とか演出を乗せるなど、オンラインを意識したコンテンツづくりが必要になるでしょう。

 それにゲームでいえば、ゲーム実況の流れが圧倒的に大きいわけです。特にコンシューマーゲームでは、そこでの広がりやすさを考えたゲームづくりを各社がしている。スマホゲームについては、RPGなどジャンル的に(ゲーム実況に)あまり向かない面がありますが、ユーザー数を増やしていくためには、そうした視点も必要になってくるだろうなとは思います。

マルチデバイスとWebコミックに注力

――それらを踏まえて、21年の注力ポイントを教えてください。

広瀬氏 21年は、ゲームについてもっと幅広くチャレンジしていきます。スマホゲーム市場の成熟化を踏まえると、中期的には東アジアを含めたグローバル展開がポイントですが、その前段階としてやらないといけないのが、コンシューマー向けタイトルなどのマルチデバイス事業です。コンテンツのつくり方もさらに広げたいと思っています。

 また別次元の話ですが、この2~3年、電子書籍の伸びがゲームに比べても圧倒的に大きい。スマホで漫画を読むことへの抵抗が一気に下がったのだと思います。IPを広げていくうえで、電子書籍でも皆さんにより触れてもらう機会をつくっていく必要があるのかなと思います。弊社のグループ会社、ブシロードメディアでもWebコミックを21年から始めており、IPデベロッパーとして、原作の開発方法を広げているところです。

グループ会社のブシロードメディアは2021年1月22日、漫画を無料で読めるWebサイト「コミックブシロードWEB」を開始した
グループ会社のブシロードメディアは2021年1月22日、漫画を無料で読めるWebサイト「コミックブシロードWEB」を開始した

 「バンドリ!」や「D4DJ」のように、ゲームだけではなくアニメやライブも含めた展開になると、一つひとつの規模が大きく、開発費は、5億円ではききません。2桁近くになるのがほとんどです。アニメの制作を押さえるという観点では、5~10年ぐらいIPを運営するつもりでないとできません。

 ですから、リードタイムをかけず、もう少しコンパクトに勝負できるところを増やしたい。例えばWebコミックから人気が出てきたIPを、次はこういう展開ができるよねと大きくしていってもいい。いきなりスマホゲームを何億円もかけて開発するのは無理かもしれないけど、Nintendo Switch版のダウンロードコンテンツから始めるならできるとか。IPを生み出すところで、小粒だったり断続的な展開になったりしたとしても、クイックに取り組めるようにしていきたいですね。

広瀬 和彦(ひろせ かずひこ)氏
ブシロード 取締役
1978年東京都生まれ。東京大学大学院情報理工学部を卒業後、日本IBMなどを経て、2011年5月にブシロード入社。12年9月に取締役就任、デジタルコンテンツ事業を管掌し、「ブシモ」ブランドで数々のモバイルオンラインゲームを立ち上げてきた。現在は中国事業開発も推進している

(写真/辺見真也、写真提供/ブシロード)