本連載では企業革新を推進する人材を「ダイナモ(発電機)」と呼び、日本企業が進むべき今後の方向を示す。知識ワーカーに従事する人々は、主に3つに分類される。「ダイナモ(発電機)」「ルーザー(負け馬)」、そして「クルーザー(遊覧船)」である。問題はクルーザーの人たちだ。書籍『企業変革を牽引する新世代リーダー ダイナモ人を呼び起こせ』の内容を一部抜粋して紹介する。

今ほど「ダイナモ人」が求められている時代はない (筆者作成)
今ほど「ダイナモ人」が求められている時代はない (筆者作成)
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 ピーター・ドラッカーはその著書『明日を支配するもの』の中で、知識ワーカーの生産性を高めるには、自律性を持って自らをマネジメントする、つまり「目的を自ら考え、内発的な動機に基づき主体的に働くこと」の大切さを指摘している。弁護士やコンサルタントといったプロフェッショナル・サービスファーム経営の「指導者」ともいわれたデビッド・メイスターは、知識ワーカーに従事する人々を以下の3つに分類している。

(1)ダイナモ(発電機):目的を持ち、自律的、精力的に働く人々
(2)ルーザー(負け馬):組織、業務に適応できない人々
(3)クルーザー(遊覧船):社内を遊覧(クルーズ)という処世術で生きる人々

 一番の問題は実はルーザーではなく、遊覧してばかりのクルーザーにあることがほとんどだ。あなたの会社の「優秀な人材」は、クルーザーで占められてはいないだろうか? 例えば、皆さんの会社では、以下のような症状が見られないだろうか?

  • 経営層が、管理職と若手の元気のなさを嘆く。「俺の若いころは……したもんだ」という武勇伝が口ぐせの一方で、大胆な提案がたまに上がってきても、エビデンス不在を理由になかなか承認しない。
  • 中間管理職が、経営陣のふがいなさを隠れて批判しつつ、下には上の指示をそのまま降ろす。「俺も本当はおかしいと思っているんだけどさ……」が口ぐせだが、「おかしい」と上に物申すことは絶対ない。さらに筋が悪いと、「手柄は自分のもの、失敗の責任は部下のもの」という現象が起こる。
  • 経営層と管理職の言動を見ている若手は、会社の未来にも自分のキャリアにも希望を持てない。「どうせ、ウチの会社は……」が口ぐせで、管理職になりたいとは思えない。最低限の労力で業務をこなし、及第点の評価とできだけ早く帰ることが目標になっている。

 筆者は、多くの日本企業の経営、管理職、若手中堅すべての層の方々と日々お会いしている(最近は、めっきりリモートが多くなった)が、階層間の相互不信頼は、年を追うごとに深まっているというのが偽らざる実感だ。世界最低レベルの経営層への信頼度と熱意ある社員の割合は、これを端的に示しているのではないだろうか。実は、この問題は根が深く、それぞれの見ている時間軸や視座が異なるため、相互理解の糸口すらつかめないことも多い。

逃げ切りを図る経営層、隷属する管理職、希望を失う若手社員

 ダイナモに対して、問題意識を持たずに社内を遊覧する処世術で日々をやり過ごす人材を「クルーザー」と呼ぶなら、それぞれの層の典型的クルーザーの姿は、以下のように描くことができる。

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