本連載では企業革新を推進する人材を「ダイナモ(発電機)」と呼び、日本企業が進むべき今後の方向を示す。2回目の今回は、日本企業から活力がなくなった理由について考察する。失われた30年は、かつての日本企業の長所を短所に変えてしまった。書籍『企業変革を牽引する新世代リーダー ダイナモ人を呼び起こせ』の内容を一部抜粋して紹介する。

「ダイナモ人」のイメージ。自ら考えて動く人材が、日本企業を救う
「ダイナモ人」のイメージ。自ら考えて動く人材が、日本企業を救う

前回(第1回)はこちら

 残念ながら、多くの日本企業にとって、平成とは、組織と個の「知的活力」、すなわち対話や実践から新たな価値を生みだすダイナミズムを大きく失った30年間だった。知的活力を失った企業には、業種や業界にかかわらず、「停滞性症候群」とでも呼びたくなる、共通の不活性の症状が見られる。そうした「活力のない組織の症状」を、前回の(1)(2)(3)に続いて見ていこう。

活力のない組織の症状(4) 低い顧客・市場感度

 「顧客のため、社会のため」。ほとんどの企業の理念やビジョンには、高邁(こうまい)な目的が掲げられている。一方で、本当の意味で顧客の困りごとや市場の潜在ニーズを感じ取り、サービスや価値として届けられている企業が、どれだけあるだろうか?

 「顧客の声を聞く」ことと顧客・市場感度の高さは、似て非なるものである。前者は自社の商品・サービスを使うお客様の声だから、自然と既存の商品・サービスに向けられる。一方、顧客・市場の感度とは、個人、コミュニティー、社会の、時として潜在的な、本人たちも気づいていない困りごとを見いだし、新たな解決(顧客価値)を届ける機会をつくりだすことだ。既存事業・商品の前提が強い組織には、潜在顧客・市場へのセンサー機能がないことも多い。

 また、「モノづくり」を日本企業の強みと考える人はいまだ多いが、モノづくり力は提供価値の要素の1つにすぎない。「製品の機能は語れるが、顧客の便益は曖昧」とか、「機能品質は誇れるが、顧客価値は分かりづらい」という製品やサービスが多いことは、久しく指摘されている日本企業の弱点である。モノづくり力が価値を発揮するのは、「顧客の欲しい経験」を理解した上で、それをトータルで届けるデザインの中に、モノづくりが組み込まれている場合だけだ。残念ながら、これができている日本企業は非常に少数にとどまっている。

 さらに、「モノづくり」への強い幻想は、「モノづくりの現場」ばかりに目を向けさせ、顧客が困りごとに直面したり、サービスを使ったりする「顧客側の現場」があることを忘れさせてしまう。「技術の精緻なロードマップは描くが、業界外からの破壊的なモデルには無頓着」「既存事業と商品のレンズでしか市場を見ない」あるいは「顧客の顔よりも上司の顔色をうかがう」ことが多いとしたら、あなたの企業の顧客・市場への感度が低く、また、そのことにすら気づいていないことの表れだ。

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