東急とJR東日本、東京メトロは複合施設「渋谷スクランブルスクエア」内に、スタートアップを支援する会員制インキュベーション施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」を開設している。渋谷の「ギャルマインド」を新規事業の創出に生かせないかなど、ユニークな試みが出てきた。イノベーション創出・実現のためのデザインファーム、i.lab(東京・台東)の横田幸信氏、杉江周平氏がSHIBUYA QWSの現状や今後の行方などを担当者に聞いた。今回は後編。
杉江周平氏(以下、杉江) SHIBUYA QWSを2019年に開設してから現在、約2年半がたちますが、運営上の苦労はどのようなものがありましたか。
野村幸雄氏(以下、野村) 新型コロナウイルス感染症の拡大があり、プログラムのオンライン化などを実施してきました。そんな状況でも会員が少しずつ増えてきたので、少しは私どもの考えが皆さまの役に立っているかなとは思っております。
間仕切りが全く無いオープンなスペースにしているので、大企業とスタートアップ、学生、大学の先生がフラットに付き合いながら、ネットワークを広げて一緒に新しいことへチャレンジしたり、もしくはアメーバ的に新規プロジェクトが生まれたりするようなこともあります。隣にいる会員同士がそれぞれのプロジェクトのエンジニアやデザイナーを融通し、協同で新しいことを始めるという例も出てきました。そういう成果が見えてきたので、コミュニティーづくりは成功しつつあるといえるでしょう。
東浦亮典氏(以下、東浦) 最初にSHIBUYA QWSのスペースを見たとき、「こんな広い場所を使い切れるのか」と心配しましたが、実際には多くの会員が集まり、比較的思惑通りに運んだと思います。リチャード・フロリダさんとかジェイン・ジェイコブズさんの話をしましたけど、やっぱり街の持つ力っていうのがあって、SHIBUYA QWSだけの力じゃ絶対ないと思うんですね。
ほかの街にも同様の施設ができていますが、渋谷の街は違います。SHIBUYA QWSの窓の下をのぞくとスクランブル交差点になっていて、若者が毎日いっぱいいる。週末になると閑散とするような街と比べると、街の持つ力が違うと感じますね。渋谷駅から直結している施設内にあるSHIBUYA QWSは、かなり特異な存在かもしれません。それを最大限に有効活用したいですね。
会議では社長も上司もあだ名で呼び、敬語は使わない
杉江 SHIBUYA QWSでは、新規事業の創出をそれぞれの「プロジェクト」としていますが、これまでの成功事例を教えてください。
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