東急とJR東日本、東京メトロは東京・渋谷にある複合施設「渋谷スクランブルスクエア」内で、スタートアップを支援する会員制インキュベーション施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」を運営している。「渋谷」から新たな“問い”を発し、社会課題の解決につなげるという。イノベーション創出・実現のためのデザインファーム、i.lab(東京・台東)の横田幸信氏、杉江周平氏がSHIBUYA QWS設立の背景やこだわりなどを担当者に聞いた。今回は前編。
横田幸信氏(以下、横田) 東急とJR東日本、東京メトロが開設・運営を手がける「SHIBUYA QWS」は、年齢や専門領域を問わずに渋谷に集まって活動するグループのための会員制の施設です。2019年11月にスタートし、コンセプトは「渋谷から世界へ問いかける可能性の交差点」。会員には、企業や地方自治体からの参加者のほか、プロジェクトチームの活動拠点として使用する人も多く、10代から70代までいます。さまざまな交流や領域横断の取り組みから“化学変化”を生み出してイノベーションにつなげるなど、未来に向けた価値創造活動を加速させる拠点を目指しているそうです。
最近は企業がアクセラレータープログラムなどを主催し、スタートアップ企業などを支援して事業創出を加速させる取り組みが増えています。また、他企業との協業を促進させる目的で、イノベーションセンターを自社内に設立する企業も増えています。一方、SHIBUYA QWSでは、事業創出は選択肢の1つにすぎず、社会の本質を探究し、常に問い続けることが、社会への新しい価値創出につながる原点になると考えています。「Question with sensibility(問いの感性)」の頭文字を取って、SHIBUYA QWSにしているそうです。他社の同様の施設との違いなどをお聞きし、SHIBUYA QWSのイノベーションに対する考え方を明らかにしたいと思います。
「ゼロからイチを育てる」ための新たな施設
東浦亮典氏(以下、東浦) 私は東急の常務執行役員で、社内のイノベーション組織といえる「フューチャー・デザインラボ」も担当するなど新規事業の企画を手がけてきており、SHIBUYA QWSの立ち上げをアドバイスする立場です。SHIBUYA QWSは「渋谷スクランブルスクエア」の15階フロア全体を占め、200人規模のイベントを開催できる「SCRAMBLE HALL」、さまざまな活動を行い人々が行き交う空間「CROSS PARK」、交流や対話を促進する上質な空間「SALON」、新しい価値創造に取り組む場「PROJECT BASE」などの多様な場で構成し、企業や自治体,大学などの共創と支援を促進します。
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