NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2020年4月、「イノベーションセンター」を設立した。先端技術にデザインの考え方も加えた「B(Business) T(Technology) C(Creative)+ S(Strategy)」の四位一体で推進。既存事業の革新や新規事業の創出、さらには新規事業を創出できる人材育成も狙う。イノベーション創出・実現のためのコンサルティングファーム、i.lab(東京・台東)の杉江周平氏と横田幸信氏が、同センター設立の背景やこだわりなどを聞いた。今回は前編。
杉江周平氏(以下、杉江) 多くの企業で、イノベーション推進に向けた部署を設置する動きがあります。しかし各企業にお聞きすると、それぞれイノベーションへのアプローチが違い、企業ならではのこだわりがあるようです。単にイノベーション創出といっても、そこには企業のDNAに根差した、さまざまな考え方があるようです。この連載でも、イノベーション創出部門の担当者に取材し、イノベーション組織のつくり方について考察しています。
今回はNTTコミュニケーションズを取り上げました。2020年4月に「イノベーションセンター」を設立し、22年2月には最先端技術を備えたワークプレイス「OPEN HUB Park(オープンハブパーク)」を本社がある大手町プレイスウエストタワー(東京・千代田)に開設。ユーザー企業やパートナー企業と一緒に議論や実験ができる「場」も用意しています。まずはイノベーションセンターを設立した背景、役割などを教えてください。
社員たちが自分で考えて行動しなくなっていた
稲葉秀司氏(以下、稲葉) 私はイノベーションセンター長として、20年4月の発足当初より組織を率いています。私は1989年にNTTに入社後、99年のNTT再編成の業務を手がけ、そのときにNTTコミュニケーションズの組織や事業戦略策定に携わりました。そしてそのままNTTコミュニケーションズに移籍し、2017年に経営企画部長となりました。そこで改めて、イノベーションを起こす組織とはどういうものかについて考えてきました。
経営企画部長になる以前、実はグループ会社のNTTレゾナント(東京・千代田)に13年から3年間在籍していました。NTTレゾナントはグループでは比較的、若い会社で、検索サービス「goo」を中心にコンシューマー向けアプリやサービスを手がけています。若い社員も生き生きと仕事を取り組み、実行するような企業文化がありました。「私がやる!協力する!楽しくやる!」というのがNTTレゾナントの行動指針で、それを地でいくような会社でした。
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