イノベーション創出・実現のコンサルティングファーム、i.lab(東京・台東)のマネージングディレクターである横田幸信氏が先進企業のイノベーション担当者に取材し、どうすれば企業はイノベーションを実現できるかを現場の声から明らかにしていく。7回目は、ポーラ・オルビスグループの研究開発体制について4人のキーパーソンに聞いた後編。

「美肌ウェルネスツーリズム」で連携したポーラ・オルビスホールディングス、ANAホールディングス、島根県の調印式の模様(写真提供/ポーラ・オルビスホールディングス)
「美肌ウェルネスツーリズム」で連携したポーラ・オルビスホールディングス、ANAホールディングス、島根県の調印式の模様(写真提供/ポーラ・オルビスホールディングス)

中編はこちら

横田幸信氏(以下、横田) 次にポーラ・オルビスホールディングスの「Multiple Intelligence Research Center」(以下、MIRC)におけるインキュベーションチームとしての役割やミッションを教えてください。

松本剛氏(以下、松本) 研究成果を世に還元することが役割ですね。「ファウンダー」と呼ぶ新規事業の提案者と一緒に、グループ企業のポーラ化成工業「Frontier Research Center」(以下、FRC)と一緒に、それをどう社会に還元できるか、物語化できるのかを考えています。イノベーションのプロセスで言う「発散」をキュレーションチームが行い、FRCで「収束」させるなら、インキュベーションチームが事業化に向けて広げる「発散」を再度行う。そのまま事業化に進めばいいのですが、FRCに再度バトンタッチするときもあります。

MIRCのインキュベーションチーム チームリーダーの松本剛氏(写真/丸毛 透)
MIRCのインキュベーションチーム チームリーダーの松本剛氏(写真/丸毛 透)

新規事業のプロジェクトが続々

横田 すでに事業化に進んでいる例はありますか。

松本 例えば、FRCの研究成果から生まれた「me-fullness(ミーフルネス)」プロジェクトが、2021年6月に経済産業省の「令和3年度フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の対象として採択されました。

 me-fullnessとは「自分自身(me)が満たされている」という状態を示す、自分たちでつくった言葉です。フェムテック(FemTech)も「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」をかけあわせています。同プロジェクトでは、FRCの技術を活用してウェルビーイングの実現と化粧品の枠を超えた事業化を目指し、第1弾としてスマートフォン向けアプリを開発しています。

この記事は会員限定(無料)です。

7
この記事をいいね!する