イノベーション創出・実現のコンサルティングファーム、i.labのマネージングディレクターである横田幸信氏が先進企業のイノベーション担当者に取材し、どうすれば企業はイノベーションを実現できるかを現場の声から明らかにしていく。6回目は、ポーラ・オルビスグループの研究開発体制について4人のキーパーソンに聞いた中編。

ポーラ・オルビスホールディングスのグループ研究・知財薬事センター担当執行役員、末延則子氏(写真/丸毛 透)
ポーラ・オルビスホールディングスのグループ研究・知財薬事センター担当執行役員、末延則子氏(写真/丸毛 透)
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杉江周平氏(以下、杉江) 「リンクルショット メディカルセラム」のしわ改善だけでなく、「心が前向きになった」という顧客体験が大きな転換期になったのでしょうか。

末延則子氏(以下、末延) そうですね。それまでは化粧品を作るために幅広く情報を使おうとか、化粧品を作るために何か新しい発想を持とうとしていましたが、化粧品以外の価値を創造しようとまでは考えが及ばなかったんですよね。

 それまでは「美白チーム」や「シワチーム」など皮膚科学の機能ごとに分かれていた研究体制も、グループ企業であるポーラ化成工業の「Frontier Research Center」(以下、FRC)では、3つのカテゴリー別に変えました。「SCIENCE」では最新技術で皮膚科学をとことん突き詰め、「LIFE」ではデジタル技術で感覚や感情を研究し、人が「時」と共に流れていくさまを考えます。「COMMUNICATION」はAI(人工知能)などで人や地球環境との触れ合いを考えています。一見すると何のメーカーの研究所か分からないカテゴリーですが、こうしたカテゴリーで研究を分けている点も特徴的だと思います。

 各カテゴリーに「PRINCIPAL INVESTIGATOR」(プリンシパルインベスティゲーター:PI)というリーダーを置き、その人がプロデューサーとなり、自分の世界観で研究を推進します。キュレーションチームが「面白いネタがありますよ」といっても、極端な話、PIが面白いと思わなければ、それはいらない。PIは研究のプロデューサーですから、その人の世界観をつくっていく。これも他社にはない研究手法でしょう。1人ひとりのPIが“スター”となれば、それを若い研究員が見て、「自分も将来的にはPIになって研究をプロデュースして世界観をつくっていきたい」となるでしょう。そうした研究部門にしていきたいと思っています。

i.labシニアディレクターの杉江周平氏(写真/丸毛 透)
i.labシニアディレクターの杉江周平氏(写真/丸毛 透)
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物理や宇宙を専門とするメンバーも

横田幸信氏(以下、横田) 研究部門のメンバーは、能力面では問題ないとしても、マインドセットの面で簡単にプロデューサー的な役割を担うPIに変われるものでしょうか。いきなり自分の世界観で研究してください、といわれてもどうでしょうか。

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