イノベーション創出・実現のコンサルティングファームi.labの横田幸信マネージングディレクターが先進企業のイノベーション担当者に取材し、どうすれば企業はイノベーションを実現できるのかを現場の声から明らかにしていく。1回目と2回目は、イノベーションに関する横田氏の考え方を紹介する。

深化と探索の違い。既存事業の成長・効率性を追求する「深化」と新規事業の創出・開発を狙う「探索」は、マネジメント上の要諦が異なる(筆者作成)
深化と探索の違い。既存事業の成長・効率性を追求する「深化」と新規事業の創出・開発を狙う「探索」は、マネジメント上の要諦が異なる(筆者作成)

 近年、企業において、「イノベーション」というキーワードが付いた部門・部署(以下、「イノベーション部署」と表記)の設立が増えています。それらの部署の役割に注目すると、言葉から連想しがちな「先端技術の研究開発」や「新規事業の開発」にとどまらず、実に多岐にわたっている状況です。また、その役割に注目して、それらを見ていくと、部署名に「イノベーション」というキーワードは付いていないものの、イノベーションという分野に関連して、明らかにひと昔前とは性質が変化したミッションを帯びた部署が増えています。本連載ではそうした部署も、広い意味で「イノベーション部署」と呼びたいと思います。

 本連載では、広い意味の「イノベーション部署」を有する企業の経営層・実務責任者との対談を通して、今の企業経営における「イノベーションへの取り組み」の最前線を伝えていきます。さらには、他企業にとって活用しやすい知見となるよう、特徴ある取り組みの中でも汎用性が高そうなものについては、「仕組み」としての一般化を試みます。

 今回は、イノベーション部署の役割に関して私自身が近年感じていたこと、「想いのこもった仮説」を紹介させてください。

企業の持続的な成長を実現するための「両利きの経営」

 読者の中には、「両利きの経営」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。概念の基本的な説明としては、企業の持続的な成長のためには、知の深化と知の探索、その両立が大事ということです。簡単にいうと「知の深化」は、既存事業の効率性・完成度を上げていくことを意味し、「知の探索」は、持続的な成長のために、現在の事業ではなく未来の事業への準備と実践を行うことを意味しています。

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