AI(人工知能)という技術を文系マーケターの方でも理解していただけるよう、厳密さは犠牲に、直感的な分かりやすさ重視で“怪説”することに挑むこの連載。第3回目で取り上げるテーマは、AI技術の中で注目を集めるディープラーニングを構成する技術「ニューラルネットワーク」だ。AI開発スタートアップLaboro.AIの“ド文系”マーケターが、開発に従事する同社エンジニアのサポートを得ながら、分かりやすさを追及してAI技術をひもといていく。
AI技術の入門書の中にあるディープラーニングの説明ページには必ずと言っていいほど次のようなことが書いてある。
ディープラーニングは、脳の神経細胞のネットワーク(ニューラルネットワーク)を参考につくられた仕組みです
もう一歩踏み込んだ本であれば、
神経細胞(ニューロン)は、接合部(シナプス)を通じて別のニューロンへとつながっています
などの解説もされているかもしれない。さらにその下には、これもほぼ100%と言っていい確率で下のような図がセットで載せられているはずだ。
この図が示していることを“怪説”ではなく、ゆるく“解説”してみよう。まず1つ目に分かるのが、ある情報が入力層、中間層、出力層の順で左から右へと流れていくということだ。次に、それらの情報の間に線が引かれており、何かしらの関係がありそうだということが読みとれる。上の図の一部分を切り取ってみよう。
入力層の円は「ノード」と呼ばれ、それぞれ数値情報(上図の場合は1、10、100)を保有しており、これが情報として入力される値になる。円同士を接続する線は「エッジ」と呼ばれ、ノード間の接続関係を表している。それぞれのエッジには「重み」と呼ばれる値が設定され、それぞれのノードの値と重みを掛け算し、足し合わせた値を右に伝えていく。
こうした流れをたどり、上図の場合は中間層で(1×1)+(10×2)+(100×3)という計算、すなわち「321」という答えが得られるというわけだ。この計算を右へ右へと行うことで最終的に答えとなる値を出力層まで届けることができ、これらの計算結果が利用される。簡単な掛け算と足し算をやっているにすぎないが、実はニューラルネットワークのひとかたまりでやっていることは、この程度のことなのだ(実際には「重み」の掛け算だけでなく「バイアス」と呼ばれる値の足し算も行われる)。しかし、このかたまりが数百個、階層が数十段階もあるような複雑な条件や構成になると、その計算はとうてい人の頭でこなせるものではなくなってくる。
こうした、一見シンプルな内容のニューラルネットワークの中間層を多数積み重ねた深い層で構築されるネットワークのことを「ディープニューラルネットワーク」と呼ぶ。近年注目を集めるディープラーニングとは、ディープニューラルネットワークに代表されるような、シンプルな計算のかたまりを大量かつ複雑に組み合わせて構成した難解なネットワークによって、入力→出力の計算を施そうという試みのことなのだ。
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