デジタル社会やメディアの総合展SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)が完全オンラインで2021年3月16日に開幕した。初日に登壇した未来学者のエイミー・ウェブ氏は、様々な領域におけるディスラプションが発生するメカニズムを説明。コロナ禍で加速したデジタル社会の行方について、現実世界を消し去るデジタル技術など大胆な予測を披露した。

エイミー・ウェブ氏。未来学者で、フューチャー・トゥデイ・インスティテュート(FTI)創設者。専門研究分野はAI(人工知能)で、米国の軍司令官、国内外の政権幹部や大企業のCEOなどにAIの未来をアドバイスしている(出所/SXSW 2021)
エイミー・ウェブ氏。未来学者で、フューチャー・トゥデイ・インスティテュート(FTI)創設者。専門研究分野はAI(人工知能)で、米国の軍司令官、国内外の政権幹部や大企業のCEOなどにAIの未来をアドバイスしている(出所/SXSW 2021)
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 「私は定量的未来学者で、世界中の何百もの組織で利用されている未来予測の方法論を開発している。定量的、定性的なデータに基づいて、モデルとして変化のシグナルを見つけるものだ」

 ウェブ氏は冒頭、このように切り出し、将来のシグナルについての知見を説明し始めた。そこで用いたのが「Environment(環境)」「メディア&テレコミュニケーション」など、11の分野を示した「ディスラプションの輪」である。ウェブ氏は「これらはマクロフォースと呼んでいて、誰もコントロールすることができない外部の不確実性を示し、我々の住んでいる世界にインパクトを与えている」と説明する。これらはウェブ氏らが毎年発行しているレポート「Tech Trends Report」の2021年版を基にしている。

強いシグナルは警告の指標

ウェブ氏が示した「ディスラプションの輪」。11分野のマクロフォース、シグナル、トレンド、テクノロジーで構成する(出所/FTI、SXSW 2021)
ウェブ氏が示した「ディスラプションの輪」。11分野のマクロフォース、シグナル、トレンド、テクノロジーで構成する(出所/FTI、SXSW 2021)
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 ディスラプションの輪にはマクロフォース以外に、円の中心部から「トレンド」「強いシグナル」「弱いシグナル」「テクノロジー」が描かれている。弱いシグナルは、主流になっていない新技術の開発や小さなイノベーション、強いシグナルはより大きなイノベーションや重要な開発、大きな研究開発の進展、巨額の資金提供などを示しており「何かが変わろうとしている明らかな警告指標である」(ウェブ氏)。最も中心部にあるトレンドは、これらのシグナルとマクロフォースが交わることで長期的に大きくなっていくものだという。

 そして新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題となったこの1年間、「何千ものシグナルが出現している」(ウェブ氏)。

ノイズを消す「DR」は人のためになるか

 ウェブ氏はこうしたシグナルの一例として「DR(Diminished Reality、現実感低下)」のテクノロジーを挙げた。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)は、情報をリッチにするものだが、その逆の活用方法だ。「DRは視界から何かを取り除いたり、音を変えたり弱めたりする。それによって我々の周囲の世界を変えてしまう可能性もある」(ウェブ氏)。

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