ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝える新しいデバイス「Ontenna」の開発者である富士通の本多達也氏は、「夢を実現させるためには、周りの“共感”を生み出すことが大切」という。多くの人々を巻き込み、動かすための「共感」を生み出すヒントを紹介する連載の最終回は、「すべての人に、感謝を伝える」。

(イラスト/Han Yun Liang)
(イラスト/Han Yun Liang)

 前回の記事では、「可能性の余白をつくる」ということについてお話しさせていただきました。可能性の余白を示すことにより、ユーザーはより自分事として捉えるようになり、結果として大きな共感を生み出すことにつながると思っています。

 さて、今回は、いよいよ最終回です。多くの人を巻き込み、行動し、そして笑顔を生み出すための共感力を生み出すヒントを、最新のワークショップや取り組みを交えてお話しできればと思います。

「Ontenna」は、振動と光によって音の特徴を体で感じるアクセサリー型の装置。髪の毛や耳たぶ、えり元やそで口などに付けて使う。特徴は、音の大きさを振動と光の強さにリアルタイムに変換し、リズムやパターン、大きさといった音の特徴をユーザーに伝達できること。さらに、コントローラーを使うと複数のOntennaを同時に制御でき、ユーザーごとに任意にリズムを伝えることも可能。

Ontenna×京都市動物園 オンラインワークショップ

 2020年12月5日、「CONNECT⇄芸術・身体・デザインをひらく」(主催:文化庁、京都国立近代美術館)の一環で、京都市動物園と共に「Ontennaで感じる、動物たちのこえ、いろ、かたち」というオンラインワークショップを開催しました。Ontennaの振動と光を用いて、京都市動物園の様々な動物の鳴き声を感じてみようというオンライン形式のワークショップです。参加者は聴覚障害を持つ家族や動物に興味のある方など、合わせて13組。京都や三重、大阪や埼玉など、全国から参加してくれました。

 初めに、私からOntennaについてプレゼンテーションをした後、京都市動物園の坂本英房園長に様々な動物の鳴き声について、解説をしてもらいました。例えば、ゾウがおなかをすかせたときの鳴き声や、ゴリラが怒っているときの声、ライオンのメスとオスが鳴き交わす声など、実際の映像を見ながら教わりました。その後、坂本園長は実際に動物園の園内に出て、自らツアーガイドとなり、動物園を回っていきました。オンライン参加者はOntennaを手に握りしめ、現場でリアルタイムに動物が鳴いている声を振動や光で感じます。

Ontennaを使用しながらオンラインで動物の音を感じる参加者(写真/衣笠名津美)
Ontennaを使用しながらオンラインで動物の音を感じる参加者(写真/衣笠名津美)

 坂本園長から、動物たちの鳴き声の特徴をはじめ、生態や由来などの説明を受け、参加者たちも興味津々で聞いていました。Ontennaを用いたワークショップでは、参加者が音に対してより意識を向けるようになり、結果として注意深く観察したり、興味を示したりするような体験を目指しました。

動物の鳴き声について解説をする坂本英房園長
動物の鳴き声について解説をする坂本英房園長

 実はこのワークショップでは、京都市内の5つのライオンズクラブが京都市動物園に寄付してくれたOntennaを使用しました。以前から、Ontennaを使ってイベントを行い、イベントが終わったらその施設や地域のろう学校に寄付される仕組みをつくりたいと考えていたのですが、この取り組みがその第一歩となりました。これからこのムーブメントが全国に広がっいき、より多くの人たちが多様な楽しみ方に触れられたらうれしいなと考えています。

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