ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝える新しいデバイス「Ontenna」の開発者である富士通の本多達也氏は、「夢を実現させるためには、周りの“共感”を生み出すことが大切」という。多くの人々を巻き込み、動かすための「共感」を生み出すヒントを紹介する連載の第7回は、「それぞれの得意を生かす」ことの重要性について。

(イラスト/Han Yun Liang)
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 前回の記事では、「ビジネスとしての価値を伝える」ということについてお話しさせていただきました。単なる「いいね!」だけではなく、テストマーケティングの中で実際に有償案件を獲得できたことで、社内の上層部や関係者からの共感を得ることができました。

 ここからは、いよいよ量産設計のフェーズです。開発メンバーそれぞれが「ろう学校の人たちに本当に使ってもらえるものを作りたい」という思いを持ち続け、予算や期限に限りがある中で必死になってものづくりを行った結果、Ontennaはグッドデザイン賞金賞や特許庁長官賞といった賞を受けることができました。

 そこには、それぞれのスペシャリストが得意とすることを最大限に発揮するためのチャレンジがありました。今回は、Ontennaを量産していく過程で開発チームと一緒にどのような共感を生み出し、アイデアを形にしていったのかについてお話しさせていただきます。

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 「Ontenna」は、振動と光によって音の特徴を体で感じるアクセサリー型の装置。髪の毛や耳たぶ、えり元やそで口などに付けて使う。特徴は、音の大きさを振動と光の強さにリアルタイムに変換し、リズムやパターン、大きさといった音の特徴をユーザーに伝達できること。さらに、コントローラーを使うと複数のOntennaを同時に制御でき、ユーザーごとに任意にリズムを伝えることも可能。

量産パートナー探しからビジネスオーナー獲得へ

 1年間のテストマーケティングが終わり、無事に量産の許可を得られたものの、どのようにOntennaを製造、販売していくかを検討する必要がありました。当時、富士通本体ではハードウエア関連の事業をグループ会社に移行したり、売却したりするといった動きが加速していた状況で、社内でOntennaを量産開発してくれる事業部を探すのは困難でした。そのため、富士通本体ではなく、Ontennaを量産開発してくれるパートナーを社外で探すことにしました。

 富士通には、部品や素材、製造関連会社などを調査することが得意な「調達部隊」というスペシャリストがいます。まずは調達部隊の人たちに「限られた予算内でOntennaを製造してくれそうな会社があるか」という調査を依頼するところから始まりました。その調達部隊が中心となって、限られた予算内で協力してくれそうな会社をピックアップした結果、2社と実際に面談することになりました。

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