ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝える新しいデバイス「Ontenna」の開発者である富士通の本多達也氏は、「夢を実現させるためには、周りの“共感”を生み出すことが大切」という。多くの人々を巻き込み、動かすための「共感」を生み出すヒントを紹介する連載の第6回は、「ビジネスとしての価値を伝える」ことの重要性について。

(イラスト/Han Yun Liang)
(イラスト/Han Yun Liang)

 前回の記事では、「ユーザーと共に創る」ということについてお話しさせていただきました。誰をどのように笑顔にさせるのか、その笑顔を創るためにはどのような手段があるのか──。それらを具体的に考え、当事者と一緒になって考えていくことで、より大きな共感を生み出すプロダクトやサービスが生まれるのではないかと思っています。

 ろう学校でのテストマーケティングにおいては、生徒や先生から頂いた「ポジティブな意見」だけでなく「ネガティブな意見」にもしっかりと耳を傾け、真摯(しんし)に向き合うことで多くの「いいね!」を獲得できました。しかし、「いいね!」を得るだけでは、製品化はできません。製品化に踏み切るためには、単なるCSR(企業の社会的責任)活動ではなく、ビジネスとして持続可能なモデルをつくる必要がありました。そこで今回は、どのようにしてOntennaを製品化につなげていったのかについて、そのプロセスをお伝えします。

「Ontenna」は、振動と光によって音の特徴を体で感じるアクセサリー型の装置。髪の毛や耳たぶ、えり元やそで口などに付けて使う。特徴は、音の大きさを振動と光の強さにリアルタイムに変換し、リズムやパターン、大きさといった音の特徴をユーザーに伝達できること。 さらに、コントローラーを使うと複数のOntennaを同時に制御でき、ユーザーごとに任意にリズムを伝えることも可能。

ビジネスモデルが見えず、焦る日々

 全国3カ所のろう学校で1カ月間行ったテストマーケティングでは、すべてのろう学校から「Ontennaを継続的に使いたい」という声を頂きました。その一方、購入意向に関してアンケートを行ったところ、3校中2校にとどまるという現実が見えてきました。Ontennaはとても魅力的に感じるものの、ろう学校の年間予算は限られており、新たな設備投資のための予算が十分ではないことも明らかとなりました。

このコンテンツ・機能は会員限定です。