テレビプロデューサーとして「ゴッドタン」「あちこちオードリー」など、テレビ東京で多くの人気番組を手掛ける佐久間宣行氏。2021年3月末に退社してフリーランスに。独立後初の著作『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)が22年4月に発売、既に10万部超のヒットとなっている。佐久間氏はテレビ局という組織の中、いかに独自の面白さを打ち出すコンテンツを作り続けてきたのか。フリーになった今こそ語れる「組織の中での仕事術」が詰まった内容だ。

フリーになった今だからこそ、テレビマンとして身につけた「組織の中での仕事術」を伝えたいと語る佐久間氏
フリーになった今こそ、テレビマンとして培った「組織論」「会社員論」を書きたかったと語る佐久間氏
テレビプロデューサー 佐久間 宣行 氏
さくま・のぶゆき。1975年、福島県いわき市生まれ。99年にテレビ東京に入社しプロデューサー・演出家・作家として「ゴッドタン」「あちこちオードリー」など人気番組を多数手掛ける。19年より「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)のパーソナリティーを務める。21年にテレビ東京を退社しフリーに。著書に『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる』(扶桑社)がある
佐久間宣行『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)、2022年4月発売
佐久間宣行『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)、2022年4月発売

──21年4月に45歳でテレビ東京から独立しました。何がフリーランスへの転身の決め手となったのでしょう?

 一番の理由は、会社にとどまっていればいずれ管理職になり、番組制作に携われなくなるからです。この歳になってもまだ、クリエーターとして現場でやりたい企画がたくさんあった。実際に昇進の話がある前に会社と相談し、独立して担当番組の制作を続けたいと伝えたんです。

──独立後初の著作として「仕事術」をテーマにしたのはなぜですか。

 もともとフリーランスになる前から、インスタグラムのDMに仕事の悩み相談が届くことがあり、よく返事をしていました。ただ、この1、2年はDMの数が多過ぎてすべてに返信できず、それなら知見を書籍にしたいと思ったんです。

 フリーになった直後だからこそ、内容は僕がテレビマンとして経験してきた「組織の中での仕事術」「会社員論」がテーマとしてふさわしいと感じた。ラジオ(「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」)で話しているような私的な話や、コンテンツに関する話などはいつでも書けます。

失敗は分析すれば「データ」になる

──フリーになって、仕事のやり方やスタンスに変化は?

 ある程度の結果が見えている手堅い仕事と、実験的な企画で勝負する仕事のすみ分けを意識するようになりました。フリーランスになった直後に立て続けに仕事がコケると、新しいオファーは来なくなる。ここ1年余りは「0から1」タイプの仕事ではなく、ベースは手堅く作り、そこにいかに新しさを足していけるかという形での「負けない勝負」を続けていました。

 独立後に始めたYouTubeチャンネル(「佐久間宣行のNOBROCK TV」)でも、実験してみたい企画はありますが、YouTubeでは再生数やチャンネル登録数が結果として明確に残る。まずは自分が持っているテレビプロデューサーとしての強みや知見を生かし、バラエティー番組に近い作りの手間のかかるコンテンツから始めて、認知度や登録者数を上げていく作戦にしました。

 逆にチャレンジしたい企画は、独立以前から担当している「ゴッドタン」(テレビ東京)で試しています。15年以上続く番組なので、演者のおぎやはぎや劇団ひとりらとは信頼関係があり、安心して冒険できる。

佐久間氏が21年7月に開設したYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」。自身も出演し、番組形式に編集されたバラエティー企画を多数配信。テレビ東京時代に通らなかった企画を元にしたコンテンツも
佐久間氏が21年7月に開設したYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」。自身も出演し、番組形式に編集されたバラエティー企画を多数配信。テレビ東京時代に通らなかった企画を基にしたコンテンツも

──企画を立てる際、特に重視している点は何でしょう?

 「失敗」を生かすことですね。僕は基本的にネガティブで、自分の企画が一発で当たるとは思っていません。むしろ失敗すると思っているので、ただの失敗で終わらせないために、企画を出すときは常に「仮説を検証する感覚」でいます。提出相手からの反応やオンエア後の結果を分析し、「こうすればよかったんだ」と軌道修正を行っていくのが僕のやり方です。失敗も後で分析すれば、それはただの失敗ではなくデータになる。

 そのためには、企画を出す段階で「こうすればヒットするのでは?」と自分なりの仮説を持っておくことが重要です。仮説がないと失敗の分析もできず、チャレンジのしがいもない。自分の企画がいくら面白いと思っても、試行錯誤を繰り返して努力しなければ面白いコンテンツは生まれません。根っこにあるのは「自分を信用し過ぎない」という姿勢だと思います。今にして思うと、会社員時代にもっと実験的な企画で失敗して、データを集めておけばよかったですね(笑)

楽しく働くため「キャラ」を立て、自分に向く仕事をつかむ

──本書は特に組織内での仕事術に重点が置かれています。テレビ業界の中で、どのように今の独自の立ち位置を築いたのでしょう。

 20代の頃はとにかく、自分なりの番組のテイストや「この人なら他にないものを作れんじゃないか」と思ってもらえるオリジナリティーを身につけることを第一に考えていました。特にテレビ東京の場合、他局のヒット番組を模倣すると規模で負けてしまう。ありとあらゆるジャンルが出尽くす中、とにかく他とかぶらない、まだ誰も見つけていない領域や着眼点を探していました。

 そこに、さらに「組み合わせ」の面白さで変化をつける。僕が手掛けた中に「有吉のバカだけど…ニュースはじめました」(テレビ東京)という番組があります。当時の有吉弘行さんにはニュース番組のイメージはなかった。演者や番組のテーマがあらかじめ決められている場合でも、スポーツ、バラエティー、旅、ドラマなどあらゆるジャンルを書き出して、これまでにない掛け合わせを探していました。

 自分の武器やキャラクターが固まってくると、周りから立ち位置を認知されて、自分に向いた仕事が回ってきやすくなる。会社の中で呼吸がしやすくなります。逆にオリジナリティーが固まらないと、誰でもできるやりがいのない仕事ばかり任されて、無気力状態の悪循環にはまってしまう。キャラやスタンスの確立は、無理なく楽しく仕事をするためにも重要なんです。

 僕は入社3年目に「ナミダメ」というバラエティー番組の企画が通って新人賞を頂き、4年目で長寿番組「TVチャンピオン」のコーナー企画が何本か通った。その頃には社内で「バラエティーといえば佐久間」というキャラが認知されていました。

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