ニッポン放送の深夜ラジオ番組「オールナイトニッポン(ANN)」リスナーにとっては、パーソナリティーのオードリー、星野源、佐久間宣行らから番組中「石井ちゃん」「ひかるちゃん」と呼ばれる、おなじみの存在だ。ラジオディレクターとして数々の人気番組を制作してきた石井玄氏が、約10年間携わった深夜ラジオの現場をつづった著書『アフタートーク』(KADOKAWA)が2021年9月に発売され、即重版になるなど好調だ。

ニッポン放送「オールナイトニッポン」元チーフディレクター
石井 玄 氏

いしい・ひかる。1986年、埼玉県春日部市生まれ。2011年にラジオ制作会社、サウンドマン(現ミックスゾーン)入社。ニッポン放送で、オードリー、星野源、三四郎、佐久間宣行の「オールナイトニッポン」などでディレクターを務め、18年に「オールナイトニッポン」チーフディレクターに就任。20年にニッポン放送に入社し、現在は番組関連イベントやグッズ制作に携わる

──石井さんもですが、深夜のラジオ番組ではしばしば、番組スタッフの名前が出たり、エピソードが話題になりますね。

 ラジオ番組は少人数で作っているので、パーソナリティーとスタッフの距離が近く、話のネタが尽きたら、周りのスタッフをいじるしかないという面はあります(笑)。この本、『アフタートーク』を書くことになったのも、深夜ラジオで僕の名前を耳にしたKADOKAWAの編集者、松尾麻衣子さんに「ラジオディレクターの仕事について書いてください」とリクエストを頂いたのがきっかけでした。

石井玄著『アフタートーク』(KADOKAWA)、2021年9月15日発売
石井玄『アフタートーク』(KADOKAWA)、21年9月15日発売

──著者として反響をどのように受け止めていますか?

 本になる文章を書くなど生まれて初めてでした。執筆中はとても不安でしたが、「オールナイトニッポン」でパーソナリティーを務めているオードリーの若林正恭さんや星野源さん、佐久間宣行さんからも「良かったよ」と言ってもらえてほっとしました。銀シャリの鰻和弘さんは「石井さん、あんなにいろんなことを考えてて、めっちゃ頭いいんですね」と言ってくれました(笑)

 読者の方からも、例えば進路に悩んでいる学生さんから「この本を読んで、ラジオ業界に進もうと思いました」とメッセージをもらったり、今年から「オールナイトニッポン」を聴き始めたという中学生リスナーが熱い感想を送ってくれたりしたのは特にうれしかったですね。僕自身、ラジオ業界を目指したのは、学生時代に深夜番組を聴いて、その魅力にのめり込んだのがきっかけです。

──ラジオリスナーだった石井さんが、「ラジオを仕事にしよう」と一歩を踏み出したきっかけは?

 僕は3兄弟の末っ子で、上に兄が2人いるのですが、2人とも美術方面に才能があり、現在もそれぞれの分野で活躍しています。そんな天才肌の兄たちを見て育ったために、僕は自分には特別な才能がないということを早くから思い知っていました。でも、たとえ兄たちのようにはなれないとしても、彼らのように好きなことを仕事にする人間になりたいと思いました。

 そこで当時、TBSラジオの深夜番組枠「JUNK」の中でCMが流れていた放送の専門学校(東放学園専門学校)に入ったんです。思えば人生で唯一、能動的に自分で人生を選び取った瞬間だったかもしれません。専門学校を卒業後、晴れてラジオの制作会社に入っても、最初は朝や昼の番組に配属されましたが、いずれは深夜帯で芸人さんの番組をやりたいと思っていました。

提出相手に「どんな企画書が欲しいですか?」と聞いてしまう

──石井さんは番組制作会社入社から、約2年という異例の速さで番組ディレクターになり、現在も時間帯聴取率首位の「オードリーのオールナイトニッポン」など多くの人気番組を担当しました。ラジオの現場では、どのように自分流の仕事術を見つけていったのでしょう?

 入ったばかりの放送の現場では、同じ仕事に対して複数の先輩から違うやり方を指示されることがよくありました。CD音源の頭出し作業一つをとっても、微妙にやり方が違う。「A先輩はこの方法」「B先輩はこの方法」と全パターンを覚え、先輩が後ろで見ている際は、各先輩に教わった手順を守るようにしていた。そんな中で少しずつ仕事をもらえるようになり、最初に「オールナイトニッポン」にADとして関わることができたのが「オードリーのオールナイトニッポン」です。2011年にADになり、その後、16年から20年までディレクターを務め、最も長く関わった番組になりました。

 僕は自分の強みを「こだわりがないこと」だと考えているんです。特に新米の頃は、企画書を書くときも、自分が何をやりたいかを考えるより、「どんな番組の企画書が欲しいですか?」と、求められている企画内容を、提出相手に先に直接聞いてしまうようなこともしていた。それでいい企画ができるのなら、何の問題もないと思います。

 自分には特別な才能がないと思っていたからこそ、周りの優れた人のやり方をとにかく観察し、「全部やってみる」ことにしていました。個性が強くないからこそ、周りを生かす仕事ができる。自分は0から1を作り出すより、相手の1を100にする仕事の方が向いていると、早い段階から思っていたんです。

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