多くの人が学習しているビジネス英語。海外企業とやり取りをする部署や外資系企業のビジネスパーソンは、どのような学習方法で英語力を身に付けたのか。書籍、アプリ、LINEなど、今すぐ参考になる様々な学習法が見つかった。

アマゾンジャパン コミュニティエンゲージメントチームマネージャー
山本 薫氏(48歳)

前回(第8回)はこちら

 アマゾンジャパンで、コミュニティキャンペーンのプロジェクトリーダーとして15人のチームを引っ張る山本薫氏。メンバーの中でただ1人の日本人だ。当然、コミュニケーションは英語だが、実は「学生時代は再履修で4年次にようやく必修の単位を取り終えたほどだった」。

 留学経験も海外出張の経験も無く、英語学習を始めたのは40歳を過ぎてから。外資系IT企業に2年間在籍したが、英語は苦手なまま。43歳で転職したアマゾンジャパンの面接でも、英語は苦手だと宣言したという。すると、レベルに応じたレッスンプログラムがあるから問題ないとの返答を得た。

 入社後さっそく初級者向けコースを受講すると、「それで初級というのはずるい!と思いました。10人ほどの受講者がみな留学経験者などで、自己紹介もこなれた英語なんです」。これがターニングポイントとなった。山本氏は初めて英語を体系的に学ぼうと決意。毎週2時間のレッスンプログラムと並行して始めたのが、スカイプのレッスンだった。

 山本氏が英会話講師の紹介サイトで探したのは、オーストラリアの講師。時差が無い方が同じ生活リズムでレッスン時間を固定しやすいと考えたためだ。1カ月間、朝7時か夜21時から可能な限り毎日受講した。「英語も言葉なので、目と耳と口で身に付けていくもの。まず耳と口に慣れさせるには、短期間に集中して毎日やった方が効率的だと思ったからです」とその理由を語る。

アプリを活用して、耳と口の言語感覚を磨く

 聞く力と表現力のアップで役立ったのが2つのアプリだ。

 1つは「English Central」。10~15秒のドラマ仕立てやインタビュー動画が数多くあり、日常会話からビジネスで使う表現まで幅広いシーンが網羅されている。目的別に動画を探し、英文を見ながらアクセントやとっさの一言が学べ、マイク機能を使ってセリフを音読すれば、発音をチェックすることもできる優れものだ。

 そして山本氏が「究極の神アプリ!」というのが「Natural Reader」。自分で作った英文やニュース記事をコピー&ペーストすると、あらかじめ設定したスピードで聞くことができる。倍速にすれば早く聞き取る練習ができ、逆にゆっくりに設定すれば聞き取れるという自信にもなる。話者も選ぶことができ、US英語、UK英語、フランスなまりや中国語なまりなど多種多様だ。「話したい内容を入力して聞くことで、いかにも流ちょうな言い方が覚えられますし、国によるアクセントの違いを知ることもできる。耳と口の言語感覚を磨くために今も使い続けています」

 本での独習で参考になったのは、「英語は3語で伝わります」(ダイヤモンド社)のシンプルな例文だ。大学受験までの英語授業で知っている英単語の数は十分あるにもかかわらず、なかなか通じる英会話にならないのは、日本独自の気遣いや敬語、丁寧な表現がかえってコミュニケーションを阻害しているせいであることも。「私自身、スカイプの講師から繰り返し言われたのはシンプルに短く伝えるよう心がけることでした。つい丁寧な言い回しを英訳しようとしてしまうのですが、結論から言う、明確な表現の単語を使って英語を構成することに注力し続けています」

例文やフレーズ集を伝え方の参考にした2冊
例文やフレーズ集を伝え方の参考にした2冊

 今では、仕事中は無意識のうちに英語での思考に切り替えられるようになり、経営者が読むための4半期ごとのリポートを書くなど大役も任されている山本氏。「自分の経験から、人との会話、本、アプリを組み合わせて集中して学ぶこと、シンプルに表現することで、40歳からでも英語力は伸ばせると確信を持って言えます」と力強い。

1日2時間以上のTOEIC特訓で転職に成功

タカラトミーアーツ 安全品質課課長補佐
岡 正人氏(43歳)

 玩具メーカーのタカラトミーアーツで、海外生産における安全性や製造環境の監査窓口になっているのが岡正人氏だ。37歳のときに、現在の業務を前提に中途入社した。転職に成功したのは、半年間TOEIC対策に絞って英語を学び、905点をマークしたことが大きい。

 岡氏は転職活動期間中に、輸出入業務に興味を持ち英語力アップを決意。1日2時間以上を独習に充てた。その学習法は、徹底して「TOEICテスト新公式問題集」を解くことだ。英語の勉強は大学卒業以来。それまでTOEICを受験したことも無かったため、公式問題集を解くことで現在地を知り、自分の弱点が文法や語彙力などどこにあるのかを把握。実際の出題形式と時間配分に慣れるとともに、苦手なパートは集中的に学習し繰り返し解くことで、正しい文法や構文を身に付け、音読や速読のスピードに慣れていった。

 TOEIC対策はいわば英語のインプット。次に岡氏が取り組んだのが、使える英語のアウトプットだ。オンラインの「DMM英会話」を1カ月間集中して毎日1コマ受講。「入社して感じたのは、実際の仕事先は英米とは限らず、アジア圏を中心とした国々です。オンラインで多くの国の講師に触れることができたのは、収穫でした」と振り返る。

 入社後は、ビデオ会議や海外出張、日々のメールのやり取りなど、業務の中で英語力をブラッシュアップ。中でも生きた英語学習に役立っているのが、取引先とのSNSでのプライベートなコミュニケーションだ。「勉強で学んだ英語で、仕事の道具としてはあまり困らなくなりましたが、SNSでは生活に根付いた知らない表現に触れることができます。新しい言葉に出合ったら意識して使って身に付けるようにしています」と語る。

毎週のビデオ会議やLINE、メールで英語を積極活用
毎週のビデオ会議やLINE、メールで英語を積極活用

学び続ける人の学習術を紹介

 「日経トレンディ2021年4月号」のアンケート調査では、その他の「私の学習術」の回答も数多く集まった。ここでその一部を紹介する。

《学んだもの/公認会計士など》
企業戦略部へ異動のタイミングで、業務上必要があったため、公認会計士試験を受験。仕事をしながらなので「無理をしすぎないこと」を念頭に平日は柔軟に、休日を中心に勉強に取り組んだ。業務上必要なので現在に至るまで知識の更新を継続している。(KDDI 企業戦略部 匿名希望 30代)

《学んだもの/茶道》
新たに“学ぶ”という経験、姿勢を得たかったため茶道に挑戦。自分が知らない分野があり、そこでは新人であるという認識が人への接し方の変容を生み、自分の在り方や周りとの接し方を改めて意識するようになった。(ウエルシアホールディングス 商品本部業務推進部 森内景子氏 30代)

《学んだもの/ワインエキスパート》
ワインスクールでの筆記試験の前は毎日1時間以上は過去問や苦手な単元の学習に時間を割いていた。テイスティング試験の前は1週間に3~4本は飲み比べをして学習。施設内のバーの新メニュー開発や、ワインを共通言語とした幅広い会話に役立てている。(星のや軽井沢 サービスチーム 大橋誠氏 26歳)

(写真/吉澤咲子)

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