低迷していたサンリオピューロランドの館長に2016年に就任し、業績をV字回復させた小巻亜矢氏(19年からサンリオエンターテイメント社長)。51歳の時に東京大学大学院進学を決意し、合格。わずか6カ月間という短い準備期間にもかかわらず、超難関を突破した学習術を聞いた。
サンリオエンターテイメント社長
小巻亜矢氏(61歳)
サンリオエンターテイメント社長の小巻亜矢氏が東京大学大学院進学を決意したのは51歳の時。社会人の特別選抜は無かったため、現役東大生を相手に10倍の倍率(当時)を突破し合格を手にした。仕事においても人生においても学び続けて前進してきた小巻氏だが、「自分が東大を目指すなんて、夢にも思っていませんでした。受かったときは奇跡だと思った」と語る。
受験を決めたのは4月、入試がある9月まで準備期間はわずか6カ月間。当時、小巻氏はサンリオ社内で女性支援の会社を起業し、NPOの代表を務めていた。「忙しいけれど経営者だったから、スケジュールは自分で組み立てられた。朝5時から8時まで英語を勉強して子供を学校に送り出し、仕事をして夕方4時から深夜2時まで勉強。睡眠時間は3時間でした」 東大大学院を目指したきっかけは、同大学院の佐藤学教授(当時)の著書。「教授の提唱する『学びの共同体』という言葉に衝撃を受け、夢中で読みました。直接学びたいと受験を決意。先生の退官まで猶予がなかったので、あり得ないほどの集中力で勉強しました」
東大大学院教育学研究科の入試は1次が英語と小論文、2次は口述。課題は英語だった。教育関係の論文を訳す問題が出題されるため、単語の覚え直しを徹底。受験生の定番教材である『でる単』『院単』を反復し、完璧に覚えたもの、ほぼ大丈夫そうなもの、何度もつまずくものに分けてファイルした。和訳は過去問題やネットにある教育関連の英語論文で練習を繰り返す。小論文対策では、希望していた学科の教授の著書を読み切り、専門用語を使った文章を書いたり、要点をまとめたりした。「不思議ですが、本当に知りたいことだからすべて頭に入る。一文一文感動しながら読んだので、勉強がまるで苦にならなかった」
受験勉強の追い込みをかけようとした9月初旬、仕事先でクーラー冷えにやられ、まさかのダウン。2日間寝込むはめになった。「もう1週間しかない! と泣いていたら、息子から『まだ1週間あるじゃない』と励まされた。大学院を目指す私を冷ややかに見ていると思っていたのに、心の中では応援してくれていたと思ったら元気が出た。そこから院単をまるまる1冊覚え、そのとき覚えた単語が論文に出たのは忘れません」
入試も難関だが、入ってからも睡眠時間は4時間半の日々が続く。学業をメインにしつつも、大学にパソコンを持ち込んで授業の合間に仕事をこなした。「好奇心と向かっていく目標があれば、年齢は関係ないと実感できました。仕事の経験があるから、課題をこなすスピードは圧倒的に早かった。時間が無いと何でも効率的にできる」
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