ECサイトの運営において、既存顧客の継続購入率の向上は売り上げを増やす重要な施策だ。その手段はさまざまあるが、今回はメールの活用をテーマにする。消費者のコミュニケーションのツールは「LINE」などに移り変わっており、メールは徐々に読まれなくなっているといわれる。そのため「メールマガジン」の配信を停止する企業が増えており、不要論も叫ばれる。だが、活用次第では十分有用だ。その理由や改善の具体策などを解説する。

(写真/Shutterstock)
SNS全盛期でもメールは活用次第で十分効果を発揮できる(写真/Shutterstock)

 SNS全盛の今日ということもあり、メルマガに関して「あまり読まれていない気がする」「施策として続けるべきか迷っている」「メルマガはもう意味がないのではないか」と考える読者も多いだろう。だが、EC事業においてメルマガは、「顧客の再来訪を促す接点として、非常に重要な施策である」と断言したい。

 例えば、自分用の商品を購入した顧客に、友人の誕生日プレゼントの検討など、次の買い物の機会が訪れたとしよう。そうしたとき、メルマガをきっかけに店舗名を覚えてもらっていたり、偶然メルマガを開封して目に留まった商品の印象が残っていたりすれば、想起につながりやすくなる。また、SNSの利用頻度が低いシニア層などにはメルマガが有効に働くするケースもあり、一概に効率が悪いと切り捨てるべきではない。

 つまりメルマガは、商品購入後に店舗側が顧客に直接コンタクトできる数少ない貴重な接点であり、それを有効に活用することができれば、売り上げ増加につながる可能性を多いに秘めていると言えるだろう。

 それだけではない。メルマガの配信は立体的な施策のフックになり得る。もし、実店舗を並行して展開する企業であれば、実店舗限定のクーポンをメルマガで配信することで、ECサイトを利用する顧客を実店舗に送客するO2O(オンライン・トゥ・オフライン)の施策に活用できる。また、サンプル品を購入した顧客に絞って、使い方や商品開発秘話などを段階的にメールで配信して認知・愛着が高まるように促し、商品使用後の最適なタイミングで本商品の購入など、次のアクションへとつなげる接客的な役割も考えられる。

 こうしたリピート顧客の獲得施策は、不特定多数に情報拡散するSNSより、1on1のメールのほうがアプローチしやすい。しかし、「いくらメルマガ配信のパーミッション(同意)を取っていたとしても、たびたびメールがくると嫌がられると聞く。あまり送らないほうがいいのでは」と不安に感じるEC担当者も少なくないはずだ。

 確かに、配信タイミングや回数が不適切だったり、対象者にそぐわない内容や期待していた内容とは異なるメルマガを配信したりすると、顧客が「迷惑」に感じても不思議ではない。だが、残念なことに、店舗なりに工夫した配信タイミングや回数の範囲内でも、「メールが何度も届いて不快だ」と感じ、メルマガの購読を解除する顧客は一定数存在する。そういった顧客には、「そもそもメールという接客手段が合ってなかった」と割り切り、むしろ別の打ち手を考えるべきだ。

 メルマガに限らず、「誰にでも読まれ誰にでも喜ばれる施策」を展開するのは非常に難しい。そのため、メルマガを配信するなら、お得な情報があると判断し、読み続けてくれる顧客を楽しませることに主眼を置き、その方々に開封してクリックしてもらえるようなメルマガを配信することに注力しよう。

 つまり、メルマガ施策においては、対象者である「メルマガを読み続けている顧客」の反応を大切にし、ファン化やリピートユーザー化のために何ができるかを考えるという顧客基点の発想が重要だ。

改善指標にROASやCVRを設定はなぜ誤り

 メルマガ経由のCVR(コンバージョン率)や、配信にかかったコストをメルマガ経由の売り上げで割った「ROAS(広告の費用対効果)」など、メルマガの効果測定にはさまざまな指標が用いられる。だが、筆者はこれらの指標をメルマガの改善指標として活用するのは難しいと考えている。その理由は、購入するかどうかはメルマガの質だけでなく、誘導先のページの要素やキャンペーン内容、商品力に大きく影響されるからだ。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
16
この記事をいいね!する