自社ECサイトか、あるいは大手ECモールへの出店か。EC事業を検討するうえで、最初にぶつかる選択肢だろう。ヒト、モノ、カネに余裕があれば、すべてのプラットフォームに出店するのが理想だが、最初から両方を展開するのは難しい。そこで出店目的や自社のブランド力、SNSの活用状況などに合わせた運用体制の築き方に焦点を当てて解説したい。

ECモールへの出店か、自社ECの展開か悩んだ場合は2つのポイントが判断基準になる(写真/Shutterstock)
ECモールへの出店か、自社ECの展開か悩んだ場合は2つのポイントが判断基準になる(写真/Shutterstock)
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 まず、自社ECサイトと大手ECモールのそれぞれの利点について解説しよう。自社ECサイトを運営する最大の利点は顧客情報にある。メールアドレスなどの連絡手段を得られるため、継続的なアプローチがしやすい。また、購買履歴や顧客ごとのサイト利用データなども取りやすい。分析スキルにたけたマーケターであれば、そうしたデータ分析に基づき、より購入に結び付きやすいアプローチにつなげられる。もし、そのような知見がなかったとしても、継続的に購入してくれる顧客の傾向を見るだけでも、ネットで売れやすい商品などが浮かび上がってくるはずだ。

 しかも、ここ数年で自社ECサイトを構築するハードルは大幅に下がった。急速に市場シェアを伸ばしている「Shopify」「BASE」「STORES」といった、新興勢力のEC構築サービスの登場がその理由である。これらのサービスに共通するのは、直感的な操作で簡単にECサイトが構築できるなど、専門的な知識を必要としないことだ。以前は自社ECサイトの構築には大きな手間がかかっていたが、これらのサービスの登場で個人商店など、小規模事業者でもECサイトを構築しやすくなった。例えば「Shopify」では2020年の日本市場において、流通総額は前年比3倍超、新規出店数は2倍超だったということがそれを物語っている。

 サイトデザインの自由度が高いのも特徴だ。ブランドの世界観などを表現したい場合には、自社ECサイトを構築する必要がある。

 また、従来のECサイト構築サービスは月額費用など、運用するだけでもコストがかかっていたが、新興EC構築サービスは、固定費が不要で売り上げに対して手数料がかかるものが主流。そのため事業規模が小さく、月額費用をかけられなくても活用できる。

 一方、自社ECサイトにとって最大の弱点は集客力にある。当然、顧客は待っていても来てはくれない。広告出稿、検索エンジンで上位表示するための対策、SNSの活用など、集客のための自助努力が必要になる。この集客に力を入れなければ、閑古鳥が鳴くサイトになるだけだ。

集客力に自信がなければモール活用

 集客に自信がない場合は、ECモールを活用するのも手だろう。買い物を目的とした訪問者が大半。リアルでいうショッピングモールで、さまざまな企業が出店しており、訪問者はウインドーショッピングをするかのように店舗を行き来して買い物をする。買い物を目的とした訪問者が多いため、出店するだけで一定の集客が期待できる。

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