広告DX(デジタルトランスフォーメーション)、すなわち「デジタル」と「マス」の統合コミュニケーション設計が目指すところは効率化である。成果の向上とリソース負担の削減を共に実現することが理想だ。ところが、効率化を目指すはずが、かえってコストが増加しているケースは多い。後から調べるとCPA(顧客獲得単価)が100倍以上に膨れ上がっていたこともある。今回はその事例をいくつか紹介し、対策を考えてみよう。

(写真:Shutterstock)
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 第1回でも解説した、認知から購買までを一貫させたコミュニケーションのフルファネル設計が広告DXでは重要になる(関連記事「マーケDXを阻む最大の落とし穴 デジマス組織対立を解消せよ」)。設計の肝の1つには、ミドル・ファネル(検討段階)でのWeb動画(以下Web CM)を組み込む点にある。

ファネルとは消費者の購買プロセスに合わせて、コミュニケーション戦略を層で分けたフレームワークを指す。トップ、ミドル、ボトムの3つを一貫させたコミュニケーションが広告DXでは肝になる
ファネルとは消費者の購買プロセスに合わせて、コミュニケーション戦略を層で分けたフレームワークを指す。トップ、ミドル、ボトムの3つを一貫させたコミュニケーションが広告DXでは肝になる

 例えば、テレビCMを見て、購買意向の向上などの態度変容を起こした人が2%いたとしよう。そうした層にWeb CMを当てることで、両方を見た人は態度変容率が10%に跳ね上がることもある。これらをうまく組み合わせることでリーチと行動変容を最大化するのが、デジタルとマスの統合で目指すところだ。

 しかしこれをそのまま鵜呑みにするだけだと、ただ制作するクリエイティブの数が増えるだけで、作業と予算の増加につながってしまう。これを避けるためにも、すべてのメディアプラン、コンテンツ制作を一気呵成(かせい)にやるべきだ。この全体設計を務める担当者がいないと、デジマス統合は非効率なまま形骸化してしまう。フルファネル設計を取り入れることが目的化してまい、そこにかかる人的負担や予算は野放図のままということが起こり得る。

組織は一体化しても、発注先はバラバラ問題

 例えば、広告主の組織がデジタルとマスの統合に適応するために一体化されていたとしても、テレビCMとWeb CMの制作や出稿の発注先が異なる場合、結局はメディアごとの個別最適になりがちだ。各発注先の2社間での意思疎通はほぼないうえに、発注時点でコストは確定する。そのため、施策を実行しながら効果に合わせて予算全体を最適化することは難しいことがその理由だ。

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