DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が高まるにつれ、DX推進部、DX戦略室といった専門部署を設置する企業が増えている。しかし、そうした専門部署が開発したマーケティングメソッドが、全社的に浸透していないケースは多い。なぜ、DX推進部署が“お勉強会”に陥ってしまうのか。その理由と解決案を解説する。
これは、ある大きな広告主企業での体験談だ。その企業はデジタル活用に目を付けるのが早く、マーケティングDX推進部署は他社に先駆けて新しいマーケティングメソッドを次々発表していた。そうした発表は業界メディアに取り上げられることも多く、所属メンバーはさまざまなイベントに登壇していた。筆者は外部のクリエイティブディレクターとして同社のある商品のコミュニケーション施策に参加した。筆者に課されたのは、認知、比較・検討、購入といった購買プロセスを統合的に考えるフルファネルのコミュニケーション戦略の立案と、テレビCM、Web CMなどのクリエイティブ開発だった。
てっきり、そのDX推進部署との共同作業になるものだと想像していたのだが、当該部署のメンバーとは1度も顔を合わせずにプロジェクトは進んだ。結果的に彼らが開発したとされるマーケティングメソッドやロジックを活用する機会はなく、すべてこちらの提供するもので完結した。筆者が担当していた商品は大型ブランドだったにもかかわらず、そこに生かされないようなマーケティングメソッドは一体どこに生かされるのだろうか。
実態としては、そのマーケティングDX推進部署は現場から遊離した“お勉強会”だったのである。日本のマス広告はかなり洗練されている。業種によって差はあるものの、デジタル抜きでもまだまだ成果は出る。だから、DXが機能していなくても経営層は気付かないことが多い。そこに勉強会として存在を許される余地が出る。ここは経営層の関与の問題だ。DXでありがちな失敗として「手段の目的化」が挙げられる。部署の開設を目的としてしまうと、よりお勉強会化につながる印象がある。
DX推進部署が“お勉強会”に陥りがちなワケ
広告主のマーケティング機能の内製化が進んでいるといわれているが、実行はまだまだ広告代理店などの外部任せなのが実情だ。戦略については広告主内で議論を重ね、方針を決めても、それをどう具体化するのか、どういうメディアにどういうコンテンツを載せてアプローチするのかという段階になった途端に、広告代理店などのマーケティング支援会社任せになるケースが大半。デジタル活用についても、広告主の中でいくら知識をため、アイデアを膨らませたとしても、必ずしも実践に生かされているとは限らない。それが「DX推進部署」といった独立系組織のものであればなおさらだ。
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