マーケティング領域でもDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を見聞きすることが増えている。主に広告におけるDXとは、デジタル広告とマス広告の予算を統合的に配分し、全体最適を図ることを指す。ところが、このデジタルとマスの統合の阻害要因を多くの企業が共通して抱えている。第1回では、そうした課題をどのように解決すべきかを解説する。

(写真:Shutterstock)
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 近年「DX」がバズワード化している。DXの定義は幅広いが、本連載ではマーケティングにおける4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)のうちの「プロモーション(広告宣伝)」におけるDXを取り上げる。プロモーションでは、主にテレビメディアやWebメディアの施策をマーケティングのファネルに合わせて再配置し、適正な予算配分を行い、広告クリエイティブやコンテンツを一気通貫で作り上げて全体最適を図ることを指す。これを広告のフルファネル化と呼ぶ。

 まず、ファネルについて説明しておこう。これはターゲットへのアプローチをトップ、ミドル、ボトムの3層に分けた、漏斗(ファネル)に見立てたコミュニケーションのフレームワークを指す。消費者の購買プロセスに合わせ、トップではテレビCMのリーチ力を生かして多くの潜在ターゲットにブランドへの気づきを与える。

 検討段階に当たるミドルでは「自分ごと」としての情報を与えるため、デジタル広告のターゲティング技術を生かし、Webの動画広告で配信対象者ごとに広告を出し分けることで、深い絆と理解を生み出す。購買に近いボトムでは、リターゲティング広告、検索連動広告(リスティング)、LP(ランディングページ=広告の受け皿)などの連携で顕在ターゲットに購買行動を促すといった具合だ。

ファネルとは消費者の購買プロセスに合わせて、コミュニケーション戦略を層で分けたフレームワークを指す
ファネルとは消費者の購買プロセスに合わせて、コミュニケーション戦略を層で分けたフレームワークを指す

 これを踏まえてフルファネル化について説明すると、各ファネルがバラバラに動くのではなく、全体が有機的につながるようにメディア設計や予算配分、コンテンツを一元管理する考え方になる。デジタルとマスの長所を組み合わせ、きちんとフルファネル化するだけで広告のKPI(重要業績評価指標)は跳ね上がる。

広告業界に必要なのは「and発想」

 ただ個人的な印象では、広告業界はいつからか「or発想」に侵されているように感じている。とりわけメディアの評価についてはデジタルとマスのどちらが優れているか、といった文脈でよく語られる。日本のマーケティング現場はいわば奪い合い文化で、毎日のように扱いやシェアをとったとられたで一喜一憂している。どっちが上だ、どっちが勝った、という文脈に何でも当てはめがちだ。

 「デジタルマーケティングの予算がテレビCMの予算を超えた」といったニュースを見聞きすることが多い。だが、それはWebがテレビに置き換わることに直結するものではない。Webメディアの肝はターゲティングにあるが、ターゲティングがかえって顧客層を狭めてしまい、悪効率に陥ることだってある。

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