
企業や自治体の今後のデータ活用にヒントを与えてくれる試みが、2021年3月5日に発表された。神戸市が市民の「ヘルスケアデータ連携システム」を構築し、その運用を始めたのだ。データを連携させて何を目指すのか、医療や介護などについての個人情報をどう扱うのか。神戸市の取り組みを追った。
神戸市が構築したのは、今まで別々の情報システムに記録されていた神戸市民の医療、介護、健康診断(健診)などのデータを、個人ごとにまとめて把握できる「ヘルスケアデータ連携システム」だ。
連携させたのは、それぞれ神戸市民が加入する国民健康保険の診療レセプト(診療報酬明細書)データや健診データ、介護保険の介護レセプト(介護給付費明細書)データや認定調査票、予防接種の接種状況、住民基本台帳の転入・転出・死亡日のデータなど過去5年分。約150万人の神戸市民のうち、60万人前後をカバーする。データの特性から、64歳以下の市民は50%前後の把握にとどまるが、65~74歳の市民は約80%、75歳以上の市民はほぼ100%把握できているという。
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2020年3月から連携に取りかかり、同年11月には本格的に運用できる体制を整えた。記者会見に登壇した神戸市健康局健康企画課課長の三木竜介氏は、「住民の医療・介護・健診などのさまざまなデータを連携させ、ヘルスケアデータを積極的に活用する仕組みを作ったのは国内で初めて。これで神戸市は健康行政について、EBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)が可能になる」と話す。
市民の将来の健康状態を予測して対応も
具体的には、データベース上に記録がある約60万人の市民について、「今現在、個人ごとに健康であるか、病気にかかっていないかが、一目で分かるようになる」(三木氏)。
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