
企業を超えたデータ活用の先駆事例といえるのが、共通ポイントカードだろう。そんな共通ポイントとして、「地域限定」をうたう異色のサービスがある。リージョナルマーケティング(札幌市)が北海道で展開する「EZOCA(エゾカ)」だ。会員数は190万人以上、北海道の世帯カバー率は何と68%に達する。得られたデータをどう活用しているのか、大経済圏をつくってデータマーケティングを行う巨大共通ポイント陣にどう対抗しているのか、同社社長の渡部真也氏に聞いた。
さまざまな業種や企業をまたぎ、ためたり利用したりできる共通ポイント。「Tポイント」や「Ponta」といった“老舗”に加え、「楽天ポイント」や「dポイント」も他社へポイント制度を開放して経済圏を確立している。
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消費者にとっては、幅広くポイントを集めたり使ったりできる利便性の高さやポイント還元が魅力だろう。一方、企業にとっては、パーソナライズまでいかなくても、ある特徴を持つユーザーの塊にマーケティングを仕掛けたり、自社外からの誘客や販促策に利用したりすることなどを期待しているはずだ。データによって企業連携が進む起点にもなっている。
そんな群雄割拠な共通ポイントの中で、北海道のみで展開する地域共通ポイントカードと呼ばれる異色のサービスが話題を集めている。リージョナルマーケティングが展開する「EZOCA(エゾカ)」だ。
EZOCAは、北海道を拠点とするドラッグストアチェーン「サッポロドラッグストアー(サツドラ)」が自社のポイントカードとしてスタートし、北海道内の他社にも開放をして共通ポイント化した。道内に展開する企業を中心に、100社以上が提携。2021年2月末時点で会員数は195万人を突破し、道内での世帯普及率(全世帯数のうち住所の重複をカットした会員数の割合)は68%に達する。月間のアクティブ会員は約100万人といい、まさに生活に溶け込んでいる。
共通ポイントが先べんを付けた企業を超えたデータ活用。今後、さらに多種多様なデータが同一プラットフォーム上で“流通される”時代が来る。それを活用してビジネスにつなげたい企業にとっても、利便性が向上するだろう消費者にとってもプラスにはなる半面、消費者側には情報が集約され活用されることに対する抵抗感が存在するのは間違いない。この壁をどう乗り越えるかが、大きな課題だ。そのためには、データを利用する側が個人から信頼を得ることが最重要。その信頼を生み出す1つの可能性が、個人と利用する側の顔が互いに見える「地域性」にある。今回は、この可能性を探るべく、地域に愛され生活に溶け込んだ理由を、リージョナルマーケティング社長の渡部真也氏に聞いた。
全国共通ポイントと差別化 「非効率」に勝機
――なぜ、「地域限定」にこだわっているのか。全国的な共通ポイントとの違いは。
渡部真也氏(以下、渡部氏) 正直言って、機能で見ると、大きな資本力を持つ大手共通ポイントカードの方が優れている部分が多いと思います。例えば、アプリ一つとっても、開発コストは会員数や規模ではあまり変わりませんが、全国大手が1億人以上の市場を対象としているのに対し、北海道では500万人程度とマーケットが限られ、コストの回収面では不利になります。
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