
オンワードホールディングス傘下のアパレル大手、オンワード樫山(東京・中央)が、2020年2月に傘下ブランドが直営する旗艦店4店にカメラを導入。撮影した映像から得たデータなどを分析・活用して、店舗の収益増に取り組み始めた。ある旗艦店では、ブランド全店の平均売り上げと比べて17ポイント増という高い成果につながった。
「以前は売り上げアップを目指して店頭のレイアウトや見せ方を変えても、どれだけ来店客が増えて購買につながったのかを示す明確な数値が出てこなかった。レイアウトを変えて1週間後の店の売り上げを、前年同時期の売り上げと比較するくらいしか手がなかった」
こう語るのは、オンワード樫山第四カンパニーVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)担当である久能正彦氏だ。VMDの仕事は、アパレルブランドの魅力を最大限に発揮できるように、商品や流行の特徴を踏まえて店舗のレイアウトや内装を考え、店長などと協力して売り場をつくっていくこと。店舗の見せ方を変えてもその効果が判然としないのでは、次の効果的な手立ては打ちにくい。
しかも、久能氏が担当するany FAM(エニィ ファム)、any SiS(エニィ スィス)、Feroux(フェルゥ)の3ブランドは、いずれもショッピングセンター(SC)を軸に出店するブランド。大抵のSCでは、特定のアパレルブランドを目当てに来店する客が多いとは言えず、そのためブランド同士の競争は激烈だ。
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そこで久能氏は、何とかしてVMDとしての取り組みを“見える化”しようと考え、カメラを使ったデータ分析ソリューションの店頭への導入に踏み切った。それが2020年2月のこと。採用したのはAI(人工知能)ベンチャーの1社、ABEJA(東京・港)のソリューションである。
カメラで人の動きを把握し、入店率を計測
導入したのは、東京と関西にあるany FAMの旗艦店2店と、同じくany SiS/Feroux(2ブランドが同一店に同居)の旗艦店2店の計4店。店の前と店内に設置したカメラで撮影した映像から、入店する人の数を店の前を通る人の数で割った「入店率」を測るところから始めた。
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