
在宅勤務を中心としたニューノーマルな生活が定着する中、ネットスーパーの需要が高まっている。ただ、多くの企業は店舗事業が中心で、デジタルマーケティングのノウハウを持たない。そのため、大手企業がネット企業と手を組む動きが活発化している。西友は楽天と資本関係を結び、ライフコーポレーションはアマゾンジャパンと手を組んだ。イトーヨーカ堂はベンチャーの10X(東京・中央)のサービスを採用している。
ついに、といったところだろう。2021年3月1日、楽天は子会社の楽天DXソリューションと米投資会社のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が、米ウォルマートからスーパー大手の西友の株式取得が完了したと発表した。米アマゾン・ドット・コムが17年に米スーパー大手のホールフーズ・マーケットを買収し、OMO(オンラインとオフラインの融合)型ビジネスを推進する中、楽天が日本の小売り改革に本腰を入れて乗り出すのは時間の問題だった。そのパートナーに選んだのが西友だ。
西友と楽天の関係は18年に遡る。同1月にウォルマートと楽天は西友のネットスーパー事業において戦略的提携を発表した。楽天の技術力を生かしたレコメンデーション機能などを導入し、マーケティングを強化することが目的だ。両社で事業の拡大に取り組み、「楽天西友ネットスーパー」の20年第3四半期の流通総額を前年同期比39.9%増と大きく成長させた。西友単体でも20年の売上高は前年比5.6%増の7850億円を達成。ネットスーパーの伸長が大きく貢献しているのは疑いようもない。
西友と楽天はセンター型のネットスーパーを強化する。センター型とは、ネットスーパー専用の物流拠点を設置する方法。相対するのが既存の店舗の在庫を共有する店舗型ネットスーパーだ。センター型はネットスーパー専用の在庫管理をするため、店舗で売れてしまい欠品するといったことが防げる利点がある半面、投資コストが大きくかかる。第1回で紹介したスーパーサンシ(三重県鈴鹿市)は当初、センター型でネットスーパーを始めたが収益化は難しいと判断して、店舗型へと転換した過去を持つ。西友と楽天が高いリスクのセンター型に踏み切るのは、いち早く需要の多い都市部のマーケットを握りたいからだろう。
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西友と楽天は横浜市に最大3万~4万アイテムの取り扱いが可能な専用物流センターを21年1月から稼働させた。さらに関西地区での当日配送を拡充するため、21年2月16日に大和ハウス工業の大型物流施設「DPL茨木」(大阪府茨木市)の全フロアを賃借し、専用の物流センターを新設すると発表。21年中に稼働を開始する。
株式の取得に併せて、西友のトップが変わった。CEO(最高経営責任者)に就いたのは成城石井の社長やセブン&アイ・ホールディングスの常務を歴任してきた大久保恒夫氏だ。大久保氏は就任に当たり、「ネットショッピングを充実させながらお客様の購買ニーズの変化に迅速に対応すると同時に、全国の実店舗の運営もさらに強化することで、西友を新たな成長軌道に乗せることができると確信している」とコメント。OMO戦略を推し進めていく考えだ。
「Prime Now」終了し、ライフアプリに一本化
対して、ライフコーポレーションはアマゾンジャパンと手を組んだ。ライフは20年10月21日、「Amazon.co.jp」に出店。ライフの生鮮食品や総菜を購入できる「ライフのストア」を開設して、Amazon.co.jpの活用をさらに強化した。両社は19年から共同で、Amazon.co.jpのプラットフォームを活用したネットスーパーに取り組んできた。
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