SDGs 2021

バリアフリーと多言語で、演劇、ダンス、映画、メディア芸術などを鑑賞できるオンライン型劇場「THEATRE for ALL」が2021年2月オープンした。さまざまな立場の人の格差をなくすという意味で、SDGs(持続可能な開発目標)にも沿う取り組みだ。インターネット配信する多様なプログラムを、パソコンやスマートフォンで視聴・参加できる(一部有料)。

前回(第14回)はこちら

 「THEATRE for ALL」を運営するのは、国内外でイベント企画・運営を行う制作会社precog(プリコグ、東京・目黒)。日本語字幕、音声ガイド、手話通訳、多言語対応などのアクセシビリティーとともにコンテンツを提供する。

 作品の配信に加え、鑑賞者の鑑賞体験をより豊かにし、日常にインスピレーションを与えるラーニングプログラムの開発にも力を入れる。作品解説や対話型のワークショップなどを通して、さまざまな違いを持った視聴者やアーティストと出会い、思考を深め、新たな1歩を踏み出すきっかけとなるような体験を生み出す。

視聴者も主体的に関われる仕組み

「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の映像とワークショップ
「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の映像とワークショップ

 例えば、「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」は、アーティスト・和田永氏が中心となり、役割を終えた電化製品を新たな楽器へと蘇生させ、オーケストラを形づくるプロジェクト。その一環として17年11月に行われた奇祭「電磁盆踊り大会」を映像化したものが、2月26日から配信された「和田永『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』~本祭I:家電雷鳴篇~」だ。

 役目を終えたブラウン管テレビ、扇風機、エアコン、ラジオ、ドライヤーなどが「家電楽器」となり、東京タワーのふもとに集結。五角形の巨大やぐらを囲み、家電が奏でる祭ばやしに合わせて人々が踊るという内容だ。

 このコンテンツには日・英・中・スペイン・ポルトガルの多言語字幕、日本語音声ガイドが用意された。さらに、2月27日には「エレクトロニコス・ファンタスティコス! オンラインWS『電磁な耳の開き方』」と題し、視覚に障がいのある人を対象とするワークショップをオンラインで開催。和田氏のレクチャーの下、古い家電を新たな電子楽器へと生まれ変わらせるもので、日本語だけでなく、中国語話者と英語話者に向けたオンラインワークショップも開催した。

アクセシビリティーの研究活動も

 2月26日から4月26日まで配信する「白い鳥」は、全盲でありながら20年以上にわたり美術鑑賞を続ける白鳥建二氏を追ったドキュメンタリー映画。その方法は、目の見える人と見えない人が、一緒に「会話」をしながら鑑賞するというもの。白鳥氏とその友人たちの活動や旅、そして全盲者としての日常生活を追いながら、人がなぜアートに魅せられるのかに迫る。この作品には、バリアフリー日本語字幕、英語字幕、音声ガイドが用意される。さらに、ラーニングプログラムとして、白鳥氏がナビゲーターとなり、ほかの参加者とともに作品を鑑賞するワークショップを2月27日に実施。その様子を撮影し、トークショーとともに配信する。

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