
コーセーは2021年1~2月にかけて発売したミスト状美容ローション「雪肌精 クリアウェルネス W バリア ミスト」と日焼け止め「雪肌精 クリアウェルネス UVディフェンス」の外装パッケージに紙素材だけを使ったパウチを採用した。従来の外装パッケージはプラスチックを使用していたが、今回のパウチを使えばプラスチックはゼロになる。
20年4月に「サステナビリティ プラン」を発表したコーセーは、主力のスキンケアブランド「雪肌精」を中心に、脱プラスチックに向けて大きくかじを切ってきた。同プランは、グループ全体で持続可能な社会の実現と事業成長の両立を目指すというもの。その一環で「プラスチック容器包装資材についてのサステナビリティに配慮した設計」を推進することを表明。20年6月に発表した雪肌精ブランドのリブランディングでは、「雪肌精 クリアウェルネス」の外箱に段ボール素材を採用していた。
「雪肌精 クリアウェルネス W バリア ミスト」と「雪肌精 クリアウェルネス UVディフェンス」のパウチは、凸版印刷が既存技術を基に新規に開発したもの。下部が広がるため外装パッケージが自立する、いわゆるスタンディングパウチだ。こうしたパウチは、複数のプラスチックフィルムで構成している場合がほとんど。今回は紙素材以外、接着効果があるコーティング剤しか使用していない。プラスチックフィルムがなく、紙素材だけになる。
「紙素材で作っている外装パッケージは、化粧品業界ではあまり例がない。紙の手触りや破ったときの印象といった、紙ならではの雰囲気を伝えたかった」と、デザインを担当した商品デザイン部デザイン室デザイナーの吉田雄貴氏は言う。
紙素材だけの外装パッケージは、多くの顧客が手につかめば、しわが寄ってしまう可能性が高い。チープな印象さえあるかもしれない。
「そうした部分も含めて紙素材を楽しんでもらいたい。紙素材によって“環境に配慮している商品である”とすぐに分かってもらえば、コーセーがサステナビリティーに本気で取り組んでいる姿勢が伝わるだろう」と吉田氏は見る。
クラフト紙の風合いを出す
外装パッケージを見直すに当たり、コーセーから凸版印刷に声をかけた。凸版印刷はネスレ日本(神戸市)のチョコレート菓子「キットカット」の外袋を、紙素材で作った実績があったからだ。
ただしキットカットの外袋とは違い、コーセーは外装パッケージを自立させようとした。しかも店頭販売では棒に引っ掛けたディスプレーもあるため、上部に穴を開ける必要がある。化粧品とチョコレート菓子は重量や大きさが異なるため、紙素材だけで強度は大丈夫か、底が破れたりしないか、うまく封ができるかなどと心配する声もあった。今回は商品の容器も新しくデザインしたので、両者がうまく収まるかどうかも気になったという。さまざまな点を考慮しながら凸版印刷と協議したところ、最終的には実用に問題ない外装パッケージが出来上がった。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー