SDGsネイティブのZ世代が企業、消費の中心に 売れる商品の条件(画像)

教科書でSDGs(持続可能な開発⽬標)を学習した「SDGsネイティブ」と呼ばれるZ世代が今後、消費者の中⼼となり、従業員の中核になってくる。Z世代の中から投資家も登場している。そんな時代に、企業はどう対応すべきか。環境⾦融コンサルティングの専⾨家に聞いた。

吉高まり氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング経営企画部副部⻑
プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト

IT企業、⽶国投資銀⾏などで勤務。⽶ミシガン⼤学環境・サステナビリティ⼤学院(現)科学修士。慶応義塾⼤学⼤学院政策・メディア研究科博士(学術)。2000年、現在の三菱UFJモルガン・スタンレー証券に⼊社、クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会を⽴ち上げ。⽇経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008受賞。09年より、慶応義塾⼤学⼤学院政策・メディア研究科⾮常勤講師(環境ビジネスデザイン論担当)。環境金融コンサルティング業務に長年従事した経験を活かし、現在は政府、機関投資家、事業会社などに向けてSDGsビジネス、ESG投資、気候変動、サステナブルファイナンス領域で調査・アドバイス・講演などを実施している

前回(第4回)はこちら

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉⾼まり⽒は、⻑年、気候変動など環境⾦融コンサルティング業務に従事。2015年9⽉に国連サミットでSDGsが採択されたことを受けて、環境負荷低減の⽅法を⾒直す必要が⽣まれた企業から「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)部⾨で⾏ってきた取り組みを、持続可能なCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)事業に変えるにはどうしたらいいか」といった相談が増えているという。

従来、企業で⾏われてきたCSRの取り組みとCSV事業は何が違うのでしょうか。なぜ、急速にCSV事業の必要が⾼まっているのでしょうか。

まず、CSVにはESG投資の考え方が深く関わっています。ESG投資の歴史は、欧⽶諸国の宗教的・倫理的な背景があります。1920年代、キリスト教の教義に反しないように資産を運⽤するための社会的責任投資(SRI)の伝統から始まります。90年代にはCSRによる企業評価、経営管理への関心が高まり、2006年には国連が責任投資原則(PRI)を提唱。機関投資家が企業のE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の非財務情報を重視しながら経済的なリターンも求めるESG投資を始めました。CSVは、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授がやはり06年に発表した論文で提唱されました。08年のリーマン・ショック後、この流れは加速します。コロナ禍では、再び傷んだ経済から復活するための経済政策を、環境にも配慮して⾏う「グリーンリカバリー」という動きもあります。

 CSVは企業の本業とシナジー(相関性)のある事業で企業価値をつくることです。CSVを経営の中で機能させるには、CSR部とは別の組織を設置する必要があります。CSR部の役割は、企業としての責任を果たしているかというリスクマネジメントの役割が主ですが、CSVはすべての事業部の事業戦略に関わるので、ESG推進部やサステナビリティー推進部などを別に設置する会社もあります。しかし、経営の決定に直接関与できる部署が関わる必要があり、経営企画部と同等に位置付けないとCSVが本業の戦略に組み込まれません。現状の企業のCSR部のみで⾏うには基本的に限界があります。

 では、⼀⼈ひとりはSDGsを自分ごと化するために何をしたらいいのでしょうか。私は、⽇本では企業中⼼に進めるのがいいと思います。近江商人の「三⽅よし」の精神をご存じでしょうか。⽇本の企業になじみのある「三⽅よし」は、ステークホルダーを⼤切にしようと努めるSDGsに通じるものがあります

⽇本の企業では「買い⼿」「売り⼿」「世間」の要求を満たした「三⽅よし」の精神が根付いている。SDGsを実践しようとすると、「従業員」「株主」「地球環境」など様々なステークホルダーが加わる。ただし、三⽅よしの企業⽂化の伝統はSDGsに通じるところがあるという
⽇本の企業では「買い⼿」「売り⼿」「世間」の要求を満たした「三⽅よし」の精神が根付いている。SDGsを実践しようとすると、「従業員」「株主」「地球環境」など様々なステークホルダーが加わる。ただし、三⽅よしの企業⽂化の伝統はSDGsに通じるところがあるという
企業、⾦融機関、社会課題の間で共通⾔語として活用できるのがSDGsである。SDGsは社会が求める課題を示している。本業を通じた事業(CSV)として、これらの社会課題解決に取り組む動きが加速してきた。これまでは、CSRとしてリスク管理目的の「ネガティブインパクト」への対応が中⼼だったが、これからは、ESG投資の振興を背景に、持続可能な経営モデルとCSRを両⽴させる「ポジティブインパクト」が重視される
企業、⾦融機関、社会課題の間で共通⾔語として活用できるのがSDGsである。SDGsは社会が求める課題を示している。本業を通じた事業(CSV)として、これらの社会課題解決に取り組む動きが加速してきた。これまでは、CSRとしてリスク管理目的の「ネガティブインパクト」への対応が中⼼だったが、これからは、ESG投資の振興を背景に、持続可能な経営モデルとCSRを両⽴させる「ポジティブインパクト」が重視される

「SDGsネイティブ」なZ世代が企業、消費の中心に

 特に、国内では、デジタルトランスフォーメーションの遅れが指摘される一方で、少⼦⾼齢化が世界トップクラスのスピードで進んでいます。SNSが発展し、このコロナ禍では、世代間での価値観に大きなギャップが生まれています。「SDGsネイティブ」と呼ばれるZ世代が消費者の中⼼となり、将来の従業員となります。就職活動をしているZ世代の中には、SDGsの⽬標年である30年を迎えた後、各企業がどうするのかを知り、就活の判断材料にしようという⼈もいます(エシカル就活)。ミレニアル世代、そして教科書でSDGsを学習したZ世代は、自分の消費行動をSDGsの視点で考えるようになるかもしれませんし、将来の資金を自分で作ろうとする個人投資家が増加し、SDGsの観点で投資先を判断するようになるかもしれません。

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