2021年1月に開催された小売分野の展示会「NRF 2021: Retail's Big Show」で複数の講演者が話題としていたトピックが「コロナ禍における米ウォルマートの成功」。人の流れが止まるパンデミックの中、なぜウォルマートは成功できたのか。NRFの講演内容と、ここ数年の同社の取り組みから分析する。
2021年の「NRF」で登壇者の多くが「20年を通して1番成功したリテール」という言葉でウォルマートを称賛した。これは同時期の1月に開催していた世界最大のデジタル技術見本市「CES」でも同様で、「コロナ禍のウォルマートはすごかった」は米国のリテールビジネス界の共通認識だったようだ。
20年8~10月期は純利益が前年同期比56%増の51億3500万ドル(約5340億円)と大幅な増益を達成。ネット販売を79%増と飛躍的に伸ばし、強い業界リーダーの印象を与えたウォルマート。流通業界、そして消費者の変化をたどりつつ、その成功の理由を見ていきたい。
新型コロナウイルス感染症が広がる直前、20年1月のNRFでは「流通のDX:技術と仕組みの導入」が大きなテーマで、中でも最も大きなキーワードがBOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)だった。BOPISは、オンラインで購入手続きをして店舗で商品を受け取る仕組みのこと。当時でも、米国売り上げトップ10の流通各社がBOPISを始めていた。
このBOPISを含めた店舗とデジタルの融合を15年前後から本格的にリードしていたのが、ウォルマートだ。20年1月末にウォルマートは、全4756店舗中、全国3100店舗に、車に乗ったまま、所定の場所で購入した商品をトランクに入れてもらう「カーブサイドピックアップ」を導入していた。
その一方で、アプリのUI(ユーザー・インターフェース)とUX(ユーザー・エクスペリエンス)の改善にも力を入れていた。直感的にサクサク使える使い勝手と、店舗との連動性を高めたことで、ウォルマートのアプリは、アマゾンやスターバックスなどのアプリを抑えて高い評価を得たほか、決済系アプリのランキングでも全米No1を獲得するなど好評だった。
こうしたウォルマートの取り組みはwithコロナ時代にどう受け止められたのか。「65歳以上のシニア層が、まずウォルマートのBOPISやデリバリーを使い始めた」。そう21年のNRF講演で話したのが、ウォルマートCCO(チーフ・カスタマー・オフィサー)のジェニー・ホワイトサイド氏である。
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