視点を磨くためのデッサン

 このように、デザインマネジメントを進めるには、全体を俯瞰する視点と要素分解したディテールを見る視点の2つが必要になってくる。これらを磨くのに最も適しているのが、デッサンだと私は考えている。

 デッサンには、自分のものの見方や編集能力を鍛える要素が全部詰まっているのだ。デッサンとはただそこにあるものを描き写すというものではない。物理的な目の前の世界を、頭の中で要素分解し、いかに編集して紙に写し込むかというのがデッサンなのだ。

 例えば、今の自分の事業をどうすれば良くなるのだろうと考えることと、どうしたらうまくデッサンできるのだろうと考えることはとてもよく似ている。この部分を、もう少しきれいに演出できないのかとか、このフレームを少し切ることによって奥行きが出るのではないか、などといった創意工夫をしていくことはどちらも同じなのだ。

 まず、そこに見えているフレームを少しずらしてみたり、自分が移動して目線を変えたりしてみてほしい。すると、自分が心地いい場所や、みんなが喜んでくれそうな角度というのが見つかるはずだ。デザイナーやアーティストは、多視眼的にものを見ていて、魅力的な場所を探し当てるのに慣れているため、的確なアウトプットもしやすくなるのだ。

デッサンには、自分のものの見方や編集能力を鍛える要素が全部詰まっている
デッサンには、自分のものの見方や編集能力を鍛える要素が全部詰まっている

フレームアウトして可能性を探る

 大学や大学院の講義もそうだが、21年4月から予定しているオンライン講座でも、参加者のみなさんに実際にデッサンしてもらう。思いきりフレームアウトしてみて、あらゆる可能性を探り、自分が一番魅力的に思えるところを、まずは切り取ってみてほしい。

 このようなリフレームを体験するのは、スマートフォンのカメラで撮影することでも可能だ。少し場所をずらすだけでも、まったく違った写真となり、撮影者の意図を伝えられることが分かるだろう。これが人とのコミュニケーションにつながるのだ。

 とはいえ、写真と絵には違いがある。絵には、そこに人の情熱が入り込むと私は考えている。絵がいいのは、いつもとは違う自分になれる時間をつくれることだ。持続的にものを見て試行錯誤する時間。デッサンをすると「脳が癒やされる。こんなぜいたくな時間があったのか」と多くの人が感想を言う。これは私にとってとてもうれしいことだ。

 デッサンは年齢を重ねた人でも上達できることが統計的に分かっている。これまでの経験値が若者よりも多いので、少しヒントを与えるだけで急速に腕前が上がる人が多い。脳内開発は何歳になってもできるのである。

 ぜひ、実際のデッサンを通して、デザインマネジメントで必要となる視点がどのように磨かれていくのか体験してもらいたい。

【4月13日開講 日経クロストレンドカレッジ・特別講座】
 「視点」を変えて事業を創る
 デザインマネジメントによるイノベーター育成講座・田子塾
本連載の筆者・田子學さんによる「デザインマネジメントによるイノベーター育成講座」を実施します。事業創造に必要な「モノやコトのつながり」を見つける新たな視点、新たな視点で得た価値や気づきを「視覚化」してアウトプットする力、視点と気づきをアウトプットすることでイノベーションを起こす力、これらを得るための実践方法を学びます。

日時 4月13日、4月27日、5月11日(全3回) 13時から18時まで(予定)
会場 すべてオンラインによる授業 (パソコン、スマートフォン、これらを接続できるインターネット回線が必要です)
価格 18万円(税別)
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(構成/橋本 史郎)