
米グーグルが個人追跡型広告との決別を宣言した。同社は2021年3月3日、自社の広告プラットフォーム上では個人を特定する広告識別子を使用せず、またそういった技術を活用した広告取引を排除するという明確な方針を明らかにした。21年4月に提供予定のWebブラウザー「Chrome」の最新版では、グーグルが開発する新たな広告識別子の利用の有無をコントロールできる仕組みを搭載する。
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「当社は個人を特定できる広告技術に投資しないし、グーグルの広告プラットフォーム上ではフィンガープリント技術などの代替技術を使わせない」
グーグルAPACプライバシー製品統括のジェシカ・マーティン氏はこう強調する。グーグルは22年までに、Webブラウザー「Chrome」でサード・パーティー・クッキーの受け入れを段階的に廃止していくことを明らかにしており、その代替手段としてプライバシーに配慮した広告プラットフォーム「プライバシーサンドボックス」を開発している。
プライバシーサンドボックスに含まれる提案仕様の1つが「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」と呼ばれる代替技術だ。AI(人工知能)を用いた機械学習で利用者のインターネット利用動向をデバイス上で分析し、類似する何らかのルールで分類。その分類ごとにIDを割り振り、広告配信に活用する。
サード・パーティー・クッキーは消費者の同意なくWebサイトのアクセスログを収集して解析し、ブラウザー単位、すなわち個人単位での広告配信に活用してきたことがプライバシーの侵害に当たるとして問題視された。FLoCはこれをグループ単位にすることで、個人追跡を避けようという発想で開発されている。「サード・パーティー・クッキーの受け入れ停止後は、グーグルの広告プラットフォームはすべてプライバシーサンドボックス由来の広告配信しかできなくなる」とマーティン氏は言う。
サード・パーティー・クッキーの廃止は広告業界にとって死活問題だ。ブラウザー単位でターゲティング広告を配信できる技術がデジタル広告の強みだった。広告テクノロジー会社は独自の技術で精度を高めて、大手広告プラットフォーマーに対抗してきたが、サード・パーティー・クッキーの受け入れ停止で精度が低下すれば、ますます大手広告プラットフォーマーの市場寡占が進みかねない。
それ故、広告テクノロジー会社は消費者の同意を得た上で、メールアドレスを基に個人を対象とした広告配信を実現する共通ID技術や、ブラウザーに関連する情報で個人を推測するフィンガープリント技術といった代替手段の開発を急ぐ(関連記事「リタゲ広告に壊滅危機 広告会社が生き残りかける3つの方向性」)。
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