クッキー規制、どう対応する?

世界最大の小売業である米ウォルマートが、デジタルマーケティングの内製に舵を切っている。サード・パーティー・クッキーの活用が難しくなっている中、広告プラットフォームを運用し、自社サイトや店内メディアに食品メーカーなどの取引先からの広告を出して新しい収入源とする考えだ。広告業界にとってこれまでの顧客だったウォルマートがライバルとして登場することになる。

米ニューヨークにある実験店舗。店舗のデータセンター内に店内映像を処理するサーバーが稼働している(撮影/シリコンバレー支局)
米ニューヨークにある実験店舗。店舗のデータセンター内に店内映像を処理するサーバーが稼働している(撮影/シリコンバレー支局)

 米ウォルマートはデジタル広告を扱う部門を「Walmart Media Group」と呼んでいたが、2021年1月末に「Walmart Connect」と名称を変えた。取引先であるメーカーなどに対して、ウォルマートの店舗やウェブサイトにおけるデジタル広告を提案している。今回、「米国でトップ10の広告プラットフォームを目指す」と掲げ、事業を本格化させる。

前回(第7回)はこちら

 ウォルマートのジェニー・ホワイトサイドCCO(チーフ・カスタマー・オフィサー)は「我々はクローズドなオムニチャネルのメディア企業として、他の企業がまねをできない方法で顧客にサービスを提供できるビジネスを構築した。サービスを拡大し、エコシステム内で顧客に測定可能な価値を生み出していく」と説明する。

 ウォルマートがデジタル広告の方針を大きく転換したのは19年春。英大手広告会社WPP傘下のデジタルマーケティング支援会社、米トライアドとの契約を終了。19年4月にデジタルマーケティングのプラットフォームを手掛けるスタートアップのポリモーフの買収を公表した。こうして広告の内製化を進めた結果、21年1月で終わった21年度は広告収入が前年度比で約2倍、広告主の数は同2倍以上になったという。

 ウォルマートの動向に詳しいコンサルティング会社、IBAカンパニーの射場瞬代表取締役は「デジタル広告内製化の狙いは大きく3つある。まずはこのデジタル広告の分野がビジネスとして伸びると考えていること。2つ目はサイト内のデジタル広告で収益を上げるアマゾンへの対抗。そして3つ目が、店内のメディアを利用し、消費財メーカーが求めるデジタル広告のパッケージを開発して提供すること」と解説する。

店舗資産も活用し米トップ10を目指す

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

この記事をいいね!する