
米大手新聞のニューヨーク・タイムズは2020年、サード・パーティー・クッキーによる広告の廃止に向けた取り組みを本格化させた。電子版の有料購読者が急増する中、米グーグルなどの主要Webブラウザーにおけるサポート終了、クッキーにも規制をかけるパーソナルデータ関連の新たな法律に対応。収益向上や将来のサービスのためにデータ分析力の底上げに継続的に取り組んでいる。
「よりよい広告のために、我々は自分自身のデータプログラムを構築する」
米ニューヨーク・タイムズ(NYタイムズ)は2020年12月、サード・パーティー・クッキーの廃止に向けた進捗状況を公表した。NYタイムズがサード・パーティー・クッキーを廃止するこの方針は、20年5月に米メディアのAxios Mediaが報じ明らかになった。
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背景にあるのは、米グーグルの「Chrome」や米アップルの「Safari」などの主要ブラウザーにおけるサード・パーティー・クッキーのサポート終了や他のテクノロジーへの移行方針。クッキーへの規制も強化する個人情報保護規制のGDPR(欧州一般データ保護規則)や米カリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などに対応する意味合いもある。
NYタイムズは20年の1年間で電子版の有料購読者が166万人増加し、20年末時点で500万人を超えている。電子版読者が順調に増加しており、自社のファースト・パーティー・クッキーを利用した顧客の把握や広告出稿で、十分な収益を確保できると判断したとみられる。20年9月には、米雑誌のフォーブスからNYタイムズの広告部門トップに就いたメレディス・コピット・レビアン最高執行責任者(COO)が最高経営責任者(CEO)に就任。完全デジタル化にアクセルを踏み込んでいる。
ブラウザーや設定に依存せず施策可能
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