クッキー規制、どう対応する?

米グーグルが2年以内にWebブラウザー「Chrome」でWebサイト閲覧者の行動をトラッキングできるサード・パーティー・クッキーの利用を規制することを明らかにしたのは2020年1月のこと。それから1年がたち、脱クッキーに向けた活動が活発化している。同社は21年3月から広告主などと協力し、代替技術の実証実験を行う方針だ。猶予はあと1年。本特集ではクッキー規制がデジタルマーケティングに与える影響、プラットフォーマーの動向、そして広告主は対策として何を準備すべきなのかを探る。

(写真/Shutterstock)
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 デジタル広告プラットフォームの巨人グーグルが、脱クッキーに向けた活動をついに本格化し始めた。21年1月25日、プライバシーなどを担当するグループプロダクトマネジャーのチェトナ・ビンドラ氏が自社ブログで、「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」と呼ばれる代替技術について、シミュレーション環境で明らかになった実用性などを解説した。

 FLoCは「プライバシーサンドボックス」と呼ばれる、消費者のプライバシーに配慮したグーグルの新たな広告プラットフォーム開発の提案仕様の1つ。「サード・パーティー・クッキーは広範囲に使われているが、プライバシーの保護を考慮したときに特定の制限をかけるのが技術的に難しい。デジタル広告の発展のためには、プライバシーに配慮した新たな仕組みが必要と考えた」とビンドラ氏は開発背景を説明する。

 FLoCはAI(人工知能)を用いた機械学習で利用者のインターネット利用動向をデバイス上で分析し、類似する何らかのルールで分類する。そして、その分類ごとにIDを割り振る。分かりやすく例えれば、「旅行を検討している利用者群」といったイメージだ。ポイントはID付与の対象が個人ではなく、数千人規模の「コホート」と呼ぶグループである点。ここがブラウザー単位、つまり個人で識別するクッキーと大きく異なる。グループ単位のため、個人を特定することが難しく、プライバシーが保たれるというわけだ。

グーグルが開発するクッキーの代替技術「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」の仕組み。Webブラウザー「Chrome」のアクセス履歴をAI(人工知能)で解析し、「コホート」と呼ぶグループに分類する。コホートは数千人単位のため、個人を特定せずに識別して広告を配信できる
グーグルが開発するクッキーの代替技術「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」の仕組み。Webブラウザー「Chrome」のアクセス履歴をAI(人工知能)で解析し、「コホート」と呼ぶグループに分類する。コホートは数千人単位のため、個人を特定せずに識別して広告を配信できる

 グーグルはFLoCをクッキーに代わる広告配信の標準的識別子として提供すべく、Web技術の標準化を行う業界団体ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)や仏クリテオなどの広告事業者の意見を取り入れながら開発を進めてきた。21年3月以降はFLoCの導入に向け、実際に自社の広告プラットフォーム環境下でテストを始める。広告主や広告会社の協力の下、実用性の検証を進めていく。

なぜクッキーが問題視されるのか

 クッキーの廃止がデジタルマーケティングに与える具体的な影響を説明する前に、改めてクッキーの仕組みや課題点を整理したい。

 クッキーとはWebサーバーからブラウザーに送られる小さなテキストデータだ。初めてWebサイトにアクセスしたブラウザーには、サーバーから固有のIDが割り振られる。このIDは「セッションID」と呼ばれ、1回ごとのサイトのアクセス情報などとともにWebサイトのサーバーに保存される。このセッションIDをクッキーに書き込む。これを識別子として、2度目以降のサイトへの訪問時に同一ブラウザーであることを判別する。

 例えば、SNSや会員制サイトにログインした後にサイトを離れても再訪問時にログイン状態が維持されていたり、ECサイトでカートに商品を入れた後に離脱しても再訪問時にカート内の商品が維持されていたりするのは、クッキーで同一ユーザーと識別してセッション情報を引き継いでいるからだ。こうしたWebサイトの事業主体者が発行するクッキーをファースト・パーティー・クッキーと呼ぶ。ファースト・パーティー・クッキーはドメインをまたいで情報を取得できず、あくまでWebサイトの使い勝手をよくするために、同一ドメイン内での訪問者の識別に使う。

 一方、問題視されているのが、アクセスしたWebサイトの事業主体者とは別の第三者が発行するクッキー、すなわちサード・パーティー・クッキーである。主に広告配信に使われ、広告会社が取引先のサイトに設置した広告枠や計測タグを通じて訪問者に付与する。このクッキーを通じて、取引先のサイト閲覧データを横断的に取得。そのデータを基に旅行関心層、健康関心層といった具合に分類し、広告配信のターゲティングデータとして活用する。

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